映画『インターセプター』考察:フェミニズムの矛盾とロシア問題
毒をもって毒を制す
先ほども少し触れたように、本作を女性の社会活躍を目指すフェミニズム運動の作品と簡単にカテゴライズしてしまうと矛盾が生じます。
一般的にフェミニズム運動では、男性の肉体的な強さによるアドバンテージを良しとしない傾向が強く、暴力は女性を虐げてきた象徴だからです。
一方、映画『INTERCEPTOR インターセプター』では主人公・JJが筋肉ムキムキであり、男性陣を格闘でなぎ倒していきます。
フェミニズム的な視点だと男性をねじ伏せる爽快感はありつつ、暴力による解決で良いのか疑問が残る構造。
本来のフェミではなく毒を以て毒を制する、フェミニズムの皮を被ったムキムキ映画です。
思想のためなら攻撃を躊躇しない
「フェミニズムに賛同する女性の全体ではないが、一部は周囲の意見を排除する原理主義的な側面を持っている」とネット上で議論になることがあります。
さらに、短文でしか議論できないTwitterなどSNSの台頭によりフェミニズムだけでなくさまざまな思想・運動でこの傾向が強くなっているように思えます。
トランプ熱狂支持 VS 反トランプの断絶などが好例でしょう。
『INTERCEPTOR インターセプター』はアクション映画としてのカタルシスがある一方、誤解を恐れずにいえば女性の立場を蔑ろにする男性をフルボッコにする気持ちよさも隠しきれません。
80〜90年代と比較考察
先ほど述べた80年代〜90年代のアクション映画の流行り廃りと本作を比較・深掘りすると面白いです。
まずムキムキ脳筋アクションの代表格『ランボー』(1982)、『コマンドー』(1985)などは普通にカッコいい男性(ムキムキ)が主人公。
そのあとに続く『ダイ・ハード』(1988)でブルース・ウィルスが演じるジョン・マクレーン刑事は、ダメ親父でもあり、どこか笑えます。
そして90年代になると、ムキムキアクションではなくコメディが流行り出すのです。
その流れを踏まえてみましょう。
映画『インターセプション』では“カッコいい女性”が主人公。
ということは、次の流れはちょっとダサい女性がアクションする映画!?
女性主人公がダメ人間でジャンルは完全にアクションってあんまりないですよね。
女性問題や多様性に敏感なハリウッドではそんな作品が今後はやるかもしれません。
ロシアの核脅威、タイムリーなテーマ
映画界では時代にマッチするコンテンツが求められます。
現在の社会情勢を反映するほうが視聴者が感情移入しやすいからです。
(例えばコロナ禍では隔離やウィルスをテーマにした映画が作られました。)
2022年はロシアによるウクライナ侵攻が世界的な問題になっています。
そこへきて『INTERCEPTOR インターセプター』のロシアの核ミサイルが反アメリカ集団に奪われて、核を迎撃するというストーリー。
公開のタイミングが絶妙としかいえません。
もちろん制作時はロシアの侵攻が確定していたわけではなく、偶然かもしくは時代の流れを読んでいたということになります。
トム・クルーズの『トップガン・マーヴェリック』(2022)も核施設を攻撃するミッションでしたが、ヒットする映画は公開時期も絶妙ですね。
最後のまとめ
オーストラリア映画『INTERCEPTOR インターセプター』は、80年代のプロットを携えた迫力満点のアクションながら、時代性を反映しつつフェミニズムも取り入れた意欲作。
単純に映画として良作でありメタ的にさまざまなことが考察できる興味深い作品でした。
プロットはありがち。しかし構造は特殊。
個人的には本作のような挑戦的な作品が増えて欲しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『INTERCEPTOR インターセプター』レビュー終わり!
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