ハンターハンター:王位継承編のテーマ考察(ネタバレ):バタフライエフェクト?守護霊獣と潜在意識

  • 2022年12月22日
シネマグ
漫画『ハンターハンター』34巻以降の王位継承編のテーマは何なのか徹底考察していきます。

ハンターハンター:王位継承編のテーマ

壺中卵の儀式と守護霊獣

王位継承戦の核となるのが儀式により生まれた守護霊獣。

この守護霊獣は王子たちの意思に関係なく能力を発揮してくるのでややこしいです。

ただここに1つ大きなポイントがあります。

王位継承編で冨樫先生がやりたいのはまさに、本人の意思では決められない戦いなのでしょう。

これは非常に画期的です。

ふつう少年漫画・バトル漫画では本人の意思と強さで展開が決まります(もちろん少しの不確定要素はありますが)。

王位継承戦の場合は王子が強くても本人の意思と守護霊獣の動向が一致するとは限らないのです。

本人の考えと結果の結びつきが限りなく弱いため、王子の性格や願望から今後の展開がいっさい読めません。

シネマグ
深読みすると守護霊獣は潜在意識をあらわしているのだと思います。

例えばハルケンブルグ王子の場合は、本人は戦いたくなくても、守護霊獣は戦いを望んでいるとわかり、いきなり好戦的になります。

今後の展開は分かりませんが、表面上は好戦的なベンジャミンやツェリードニヒ王子の守護霊獣が案外バトル向きではない、などもありえるかもしれません。

まとめると人間の不確実性が戦いにどう影響するのかが王位継承戦の1つのテーマだと思いました。

キメラアント編との共通項

不確実性というキーワードはキメラアント編から引き続きです。

キメラアント編では王メルエムや護衛軍側に一定の正義や倫理観、感情があるとわかり、それがネテロ会長から見ると不確実性です。

逆にメルエムの視点では、コムギの存在やネテロ会長の核爆弾が不確実性です。

ゴンやキルアたちのネフェルピトー・シャウアプフ・モントゥトゥユピーら護衛軍とのバトルはともかく、王・コムギ・ネテロ会長の頂上決戦は、肉体的な強さとは無関係なところで決着がつきます

シネマグ
王位継承編ではこの「不確実性が盤面を決める」をより細分化して描いているのだと思いました。
戦い・争いの結果は本人の希望だけではどうにもなりません。
そんな大人の考えがただよう脱少年漫画、それが『HUNTER×HUNTER』なのです。

現代社会システム:バタフライエフェクト

王位継承戦の下層ではマフィアの争いがあり、幻影旅団もヒソカを追っています。

マフィアはエイ=イ一家とシュウ=ウ一家とシャ=ア一家の3組があり、

  • エイ=イは、第4王子ツェリードニヒ
  • シュウ=ウは、第3王子チョウライ
  • シャ=アは、第7王子ルズールス

このような同盟関係があります。

王位継承戦にマフィアの抗争はもちろん、幻影旅団とヒソカのバトルという超不確定要素まで関わってくるわけです。

この構造から現代の社会システムの複雑さのようなものが読み取れます。

「南半球での蝶の羽ばたきが北半球で竜巻を起こすか?」というバタフライエフェクト的なものを表現したいのかもしれません。

(バタフライエフェクトとはカオス理論の1つ。簡単な言い方をしてしまえば「小さな出来事がすごく大きな結果を生み出しているかもしれない」というもの)

ブラックホエール1号は規格外に広大で、船というより1つの社会です。

下層にいる人間の動向が、最上位層の王位継承戦にどう影響するのか?

そんなバタフライエフェクトが王位継承編で表現されている気がします。

モブキャラの洞察力がキメラアント編と比べても鋭く、文字数も多いのは、モブキャラの動向(蝶の羽ばたき)をストーリー本筋にしっかり影響させたい意図があるのかもしれません。