エイミー・アダムスと、ジェレミー・レナー出演の映画『メッセージ』(原題:Arrival)が、めちゃくちゃ最高だった。
監督のドゥニ・ヴィルヌーヴによる、とことんアーティスティックな映像や演出が素晴らしかったし、ストーリーも哲学的で、重厚な哀しさもあり、考えさせられる。なるべく多くの人にこの映画を見てほしい。
ここから先はネタバレありで、メッセージについての考察をしていきたいと思う。
映画『メッセージ』ネタバレ解説!言語が思考に影響を与えるとは?
メッセージを観て、なぜルイーズが未来を見ることができるようになったか、腑に落ちないという人もいるかもしれないので、説明しようと思う。
映画内でも少し触れていたが、人間の思考を決定するのは、言語である!という説があり、哲学、言語学の分野では20世紀前半から流行った考え方である。(フェルディナンド・ド・ソシュール(1857年〜1913年)というスイスの言語学者が発表した「ソシュールの定理」が大元)
簡単にいうと、日本語という言葉が、あなた自身の思考を作り上げているということだ。
つまり、ヘプタポッド(異星人)の言語を理解したルイーズは、彼らと同じように時間が流れていない、未来も過去も同時に存在するノンリニアな思考ができるので、未来が見えるようになったのだ。
ただ実際は、ルイーズがヘプタポッドの言葉を脳の思考回路が変わるほど、深く理解していたか?
深く言語や思考を理解したからといって、すぐ未来が見えるようになるか?
そもそも、ヘプタポッドの未来が見えるとは思考からくるものなのか?
などの疑問は当然残るが、そこまで追求するのは少し野暮だろう。
映画『メッセージ』ネタバレ考察!ラストは未来が見えて哀しい、でも希望も!
ルイーズは未来が見えてしまう。イアンと離婚することも、十代で死んでしまう娘も。
しかし、考えてみてほしい。
時間の概念がノンリニアなルイーズにとって、娘が死ぬ哀しい出来事は、現在であり、過去である。
そして、娘の尊さと死を知った映画のラストから、娘にまた会うことができるのだ。底知れぬ感動ではないか・・・
シンプルに考えると、死にゆくと知って娘を産むのはとても哀しいことかもしれない。
しかし、ルイーズにとって娘は、それでも触れ合いたい大切な存在なのだ。そして、娘はルイーズの傍(かたわ)らにずっと存在する。
ちなみに、タイムトラベルに関するSF映画でメッセージと同じくらいハイクオリティだったのが、クリストファー・ノーラン監督のテネット。こちらは言語哲学でなく、エントロピー減少というバリバリの物理学を扱っている。
映画『メッセージ』感想・評価まとめ
映画『メッセージ(Arrival)』のような、芸術的・哲学的な作品がもっと世の中に増えればいいとおもう。
エンタメの要素は少ないかもしれないけど、本来人間が持っている知的好奇心が揺さぶられる映画だった。歴史にしっかり残したい映画だ。
本作は全世界で220億円近い興行収入を得たのではあるが、ヒーロー映画とかの勢いに飲まれて、『メッセージ(Arrival)』のような、ちょっと難しい映画が作れなくなってしまうという事態だけは避けたい。そんなことをしたら、映画はどんどん衰退していくだろう。
『メッセージ(Arrival)』という作品と共に、その魂が世界の人々の心のスキマに入り込むことを切に願う。