映画『十一人の賊軍』ネタバレ・ラスト結末の解説
政(まさ/山田孝之)は妻・さだ(長井恵里)が仙石善右エ門(せんごく ぜんえもん/音尾琢真)に手ごめにされたと知って激怒。善右エ門を短剣で殺害して復讐を果たすが、捕まって死刑を宣告されて吊し上げられる。
花火師の息子で知的障害のあるノロ(佐久本宝)は吊るされた政を見て兄だと勘違いし彼を助けようとするが失敗。ノロも牢獄へ入れられてしまう。
世は戊辰戦争の最中にあり、新発田藩も官軍(政府軍)につくか、奥羽越列藩同盟の選択を迫られていた。しかし若殿・溝口直正(柴崎楓雅)はまだ子供で戦況の判断ができない。
家老の溝口内匠(みぞぐち たくみ/阿部サダヲ)は「奥羽越列藩同盟側についたら負け戦に巻き込まれ多大な犠牲が出る…」と考える。同盟軍の色部長門(松角洋平)と斉藤主計(駿河太郎)が軍を引き連れて城に居座り、脅してくる。
そこで溝口は同盟軍に暴言を吐きそうな殿を病気だと言って隠し、斎藤たちには「同盟軍のために兵を出す」と嘘をついた。そして裏では官軍の山縣狂介(やまがた きょうすけ/玉木宏)に「同盟軍が城から出て行ったら新発田藩は無血開城して官軍に協力する」と話していた。
溝口は忠義に厚い鷲尾兵士郎(わしお へいしろう/仲野太賀)の道場へ赴く。そして重要な砦を官軍から守る任務を与えた。「決死隊として死刑囚たちを連れていけ。狼煙が上がるまで持ち堪えたら罪人たちを無罪放免にする」と告げた。
兵士郎と入江数馬(野村周平)がこの10人を率いて砦へ到着する。罪人たちが無罪放免になる条件は、狼煙が上がるまで持ち堪えること。そして逃亡者を出さないことだった。
政は女房のところへ帰るために吊り橋を渡って逃亡を図る。兵士郎や他の死刑囚が政を捕まえようとする。そこへ水本正虎(佐野岳)と弟の正鷹(ナダル)率いる官軍がやってくる。話し合いをするために吊り橋を渡って新発田藩の城へ向かう途中だった。
溝口の企みを知らない兵士郎は官軍が攻めてきたと思い込んでみんなに戦いの合図を出す(彼は新発田藩が奥羽越列藩同盟に入り、サムライらしく戦うと信じている)。賊軍たちは必死に戦い、水本たちを追い返した。
翌日、水本たちがまたやってくる。兵士郎たちは砦から銃を撃ち、橋を渡ってきた敵を倒すが多勢に無勢だった。ノロが倉庫で見つけた花火で敵を爆発させる。兵士郎は正虎を人質に取った。
なつは藩士の入江と荒井万之助(田中俊介)がこっそり話しているのを聞く。自分たち罪人は砦を守った後で口封じとして処刑されるようだ。
話を聞いた政たちが入江たちに銃を向け、本当のことを言えと脅す。入江は、溝口の猿芝居(同盟軍を騙して官軍につく)のために砦を守らされていると告白して謝罪をする。同盟軍と官軍が鉢合わせしないように食い止めておく必要があったのだ。
兵士郎は真実を聞いて怒りに震えた。
橋の向こうから官軍の杉山荘一郎(佐野和真)が官軍に寝返えれば命は助けると言った。
政たちは投降しようとするが、兵士郎は人質として吊るしていた正虎を銃で打ち、断固拒否した。そして家族や大切なもののために命をかけて戦おうと罪人たちを鼓舞した。
その後、二枚目が自爆して橋板を落とした。
裏の山のルートから溝口の娘・加奈(木竜麻生)がやってくる。加奈は入江との子供を身ごもっていた。しかし入江は敵から受けた傷がもとで死亡。加奈は入江から、罪人たちの無罪を溝口に約束してくれと最後の言葉を受け取っていた。加奈はなつと一緒に城下町へ戻って父にそのことを伝えた。
政たちは官軍が陣取る背後の山に石油が出る場所があると知る。政たちは夜にロープで向こう側へ渡り、地面をほって石油を敵の陣地に流し込み、火をつける。敵は炎で散り散りになった。
兵士郎や爺っつぁんが敵を次々に倒していく。兵士郎と政が敵将を討ち取った。しかし爺っつぁんは死亡。
いっぽう、溝口は猿芝居が斉藤たちにばれて切腹寸前だったが若殿に止められた。
溝口は山縣から「官軍を大勢殺した決死隊の首をもってこれば新発田藩の官軍入りを認める」と言われた。
政は「妻と新発田藩以外のところで暮らす」と言った。兵士郎が政を砦から送り出した。
官軍を倒してやり切った表情の兵士郎たちだった。そこへ溝口が兵を引き連れてやってくる。
道中で引き返してきた政が「逃げろ!」と叫ぶ。鉄砲隊に撃たれて赤丹や引導が死亡。
兵士郎は卑怯者の溝口に激怒。「俺が11人目の賊軍だ!」と叫び、何人も斬り殺して溝口に迫る。溝口は真剣勝負に臨むかと思いきや小銃で兵士郎を撃ち抜く。兵士郎は何にもの人間に斬られて死亡した。安らかな顔だった。
それを見ていた政は、ノロを裏から逃がす。そして花火を大量に抱えて兵士たちを塔に誘導し、自爆する。
溝口は兵士郎の首を山縣に見せた。
溝口は藩を戦に巻き込まなかったことで町人から崇められる。しかし父が卑怯者だと知った娘の加奈は自害。溝口は「許してくれ」と叫んだ。
なつはノロと一緒に政の妻・さだに会いに行き、彼の死を伝える。
映画『十一人の賊軍』終わり
考察:武士道と存在意義をかけた戦い
映画『十一人の賊軍』は『七人の侍』のような理屈を超えた人間の連帯感が見どころの映画だと感じた。
みな外道の罪人たちなので、溝口の話が嘘だとわかった瞬間に逃げてもよかったはずである。しかし逃げなかった。
兵士郎には武士道があるから逃げないのもわかる。政や赤丹が逃げなかったのはなぜか?
そこがまさに理屈を超えた連帯感ではあるのだが、ひとつには自分たちを虐げてきた支配者たちに存在を認めさせる意味合いがあったように思えた。政にとっても赤丹にとっても、身分がはるか上の藩士たちに逆らえる最大にして最後のチャンスである。
これまで死んだように生きてきた彼らが、はじめて生きるため意外の理由に生きて、そして死んでいった力強い物語だった。
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