映画『セッション』ネタバレ考察,ラスト解釈!フレッチャー教官の論理とは?あらすじ感想

  • 2024年4月7日

映画『セッション』を観賞!賛否両論の作品だとは聞いていたが、僕はかなり楽しめた!

今回は型破りな音楽映画セッションの魅力や、なぜ酷評されることがあるのか?など存分に解説・考察しています。

教育的観点から「フレッチャー教官」が酷いという声もあるけど、そもそも彼は教育する気なんてさらさらなくて、天才を作りたいだけだよね。

映画『セッション』ネタバレあらすじ解説

フレッチャーの嫌がらせ・罵倒

フレッチャービックバンドの練習に朝6時に来るよう言われたニーマン。

寝坊し慌てて校内のスタジオに到着するが誰もおらず、スタジオ練習が9時からだったことに気づく(嘘つかれた!)。

フレッチャーは意地の悪い教官だった。練習中フレッチャーに罵詈雑言を浴びせられ泣き出すニーマン。

テンポのズレを指摘され、イスを投げつけられる。やる気を失いかけるが一念発起し、血豆が何回も破け、手が血だらけになるほどの猛練習を重ねる。

ニーマンの変貌

ある日コンテストで、バンド正規ドラマーの楽譜がニーマンが少し目を離した隙に無くなってしまい、正規ドラマーは楽譜がないと演奏できないことから、補欠要員であったニーマンが代わりに叩く事に。

コンテストは無事優勝するが、ニーマンは調子に乗り、親戚にも見下したような発言を投げつける。

フレッチャーは、バンドにニーマンが見下していたコノリーを呼び寄せドラムを叩かせる。

自分が正規ドラマーだと思っていたニーマンは激昂。今まで以上に音楽に没頭し、練習の邪魔だと彼女のニコルも振ってしまう。

事故とフレッチャーの解任

ある日フレッチャーのもとに教え子で将来有望だったショーンの訃報が届く。

フレッチャーは事故で若い才能が失われたと泣き、バンドメンバーにショーンの演奏を聴かせる。

その後の練習では矛先をドラマー3名に向け、ニーマンはたちは手を血だらけにしながら、夜中まで練習させられる。

その後のコンテストでニーマンはバスの故障で遅刻しそうになり、レンタカーで会場に到着するが、レンタカー屋にスティックを忘れ取りに戻る途中トラックと衝突事故に遭う。

それでも車から這い出し会場で演奏するニーマンだったが、事故による手の怪我のためスティックを演奏中に落とし、フレッチャーに「お前は終わりだ」と言われる。

演奏中にフレッチャーに殴りかかるニーマン。会場は騒然となった。

後日ニーマンの父と弁護士を交えた話し合いで、フレッチャーの元生徒ショーンは事故でなく首吊り自殺だったことが判明。

弁護士側からフレッチャーの指導を証言するように言われ、最初は渋っていたニーマンだったが、行き過ぎた指導内容をバラしてしまう。

天才を生みたいフレッチャー

ニーマンは学校を退学処分になり、燃え尽きから何もやる気が起きず街をブラブラしていた。

そんな折、不意に通りがけのジャズバーで演奏しているフレッチャーを発見。

誰かの発言で学校を退職処分になったと嘆くフェッチャー。

酒を飲みながら、チャリー・バーカーが若い頃バンドメンバーからシンバルを投げられたと話だし、そのエピソードがなければ天才は生まれていなかったと語る。

フレッチャーは帰り際ニーマンを自身のプロバンドのに誘い、後日ニーマンは承諾。元カノのニコルにコンテストに来るよう声を掛けるが、彼女はすでに他の人と付き合っていた。

キャラバンに命運をかける

コンテストの演奏がいざ始まろうというとき、フレッチャーはニーマンに近づき、お前が密告したことはわかっていると毒づく。

事前に渡された楽譜も演奏する曲とは違いパニクるニーマン。

1曲目をろくに演奏できずに会場を去ろうとするニーマンだったが、踵を返し再びドラムの席に着く。

そして突然、演奏予定ではなかった「キャラバン」を叩き始め、メンバーも困惑しながら演奏を開始。ニーマンは曲の終盤、怒涛のロングドラムソロに突入。

フレッチャーは完全に演奏に入り込んだニーマンを認め、

彼を立てる指揮をしてフィナーレを迎えたのだった。

映画『セッション』終わり。

映画『セッション』好きなシーン時系列

主演奏者の楽譜がなくなるシーン

ドラムの正規演奏者の楽譜が無くなったことで、ニーマンはコンテストのドラムを叩くことが出来ました。

映画の中ではなぜ楽譜が無くなったのか深く追求されていないですが、絶対これフレッチャーがやっただろ!

でも、他の人よりも練習していて、曲を暗譜していたニーマンはチャンスをモノに出来ました。覚えるって大事ですね〜。

ラストのキャラバン(曲)

ニーマンがステージへ舞い戻り、身勝手にもキャラバンを叩き始め、メンバーは困惑しながらも最高の演奏をする!

このシーンいいですね!ジャズは即興の美学であり、名演は予想外のハプニングから生まれる!ということを地で行っています!

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ラストのドラムソロ フレッチャーはニーマンに何を見たか?

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ラストのドラムソロでニーマンは今までのフレッチャーによる期待や恨みを、全てものともしない気迫を見せつけました!

フレッチャーが最後に笑うシーンでは、予想の範疇を超えたニーマンに、ある種の敬意を感じていたように思います。

フレッチャーは何か言っていますが、口元も映ってないし音声も入ってないのでわかりません。僕の予想は”You’re the best”です。

映画『セッション』ネタバレ考察

フレッチャーは意地悪か?

フレッチャー教官

意地悪か意地悪でないかでいったら、彼は間違いなく意地悪ですよね。

朝6時と嘘の時間を言ったり(これは朝練しろという意味かもしれませんが)イスを投げつけたり、ファッ◯を連発したり、

彼も当初は必要悪と思ってやっていたのでしょうが、おそらく天性のサディストでもあったため、徐々にあんな行き過ぎ指導になっていったのだと思います。

実際の教育現場でも指導者側が楽しんでしまうという傾向多少ありますよね。

ただ、本当の世界の真トップは褒めて伸ばすような甘い指導からは生まれないという研究結果もあるらしく、何が正解かは難しいです。

映画『セッション』が大ヒットして名作になったワケを解説

この映画が大ヒットした理由を僕なりに考えてみました。

理由は、学生と教官が音楽のダークな面に触れ、友情も愛情も排除したからだと思います。

仲間と一緒に音楽や演奏を作り上げる映画において、友情や愛情は最も組み込みやすいテーマです。

例え大きなテーマでしなくても、そういう要素が入っていない映画は非常に少ないです。

まず、学生が主人公という設定で音楽のダークサイドに触れるというのも斬新だと思います。

これがプロミュージシャンが主人公であれば、音楽に対する葛藤や苦悩、疎外感、挫折などが逆にテンプレになるのですが、学生が出てきた時点で、「頑張った主人公が報われる映画だ!鬼教官も本当は主人公を応援しているのだ!」と脳が勝手に判断してしまいます。

セッションはそこをうまく利用して観客を裏切ることに成功したわけです!!

友情や愛情については、例えプロミュージシャンが主人公だとしてもマストな要素ですよね!セッションはそれすらも排除しています。

序盤こそ可愛い女の子とピザ屋でデートするなんていう場面もあり、ロマンスも顔を覗かせるかと思いましたが、ニーマンは練習のためにあっさり彼女を捨てます(男としては最低の勘違い野郎w)。

後半でその彼女に電話をしますが、すでに新しい彼氏がいます(現実的な設定ですね)。

恋愛要素はたったこれだけで、音楽への追求を際立たせるための”いち素材”です。

友情に至っては、ニーマンは同じ学校のメンバーに嫌われており、さらにライバルのドラマーに暴言を吐いてしまうような奴で、そこから進歩を見せずに終わります。

あとはJ・K・シモンズの鬼教官具合が突出していて作風に合っていたのも大きな要因です。

こんな怖い教官になれた彼ならアカデミー助演男優賞も納得ですね!

鬼教官プリが中途半端だと全部の設定が上手く機能しないですが、シモンズの演技や、それを指示した監督やスタッフがしっかりしたヴィジョンを持っていたからこそ誕生したキャラクターなのです。

まとめると、

  1. 学生が音楽の狂気を追求した
  2. 友情や愛情の要素を排除した
  3. 鬼教官の演技が徹底的だった

この3つの要素が他の映画と大きく違う点であり、セッションの大きな魅力に繋がっているのです♪

映画『セッション』が酷評される理由

セッションは酷評されることも多いですがなぜでしょうか?

端的にいえば、大衆の倫理観を無視した映画だからです。

フレッチャーは一流の音楽院で最高の指導者というポストを得ていますが、指導方法は軍隊そのもの。

将来有望な青年たちをしごき、とことん追い込みます。イスも投げます(笑)。

彼は歴史に名を刻む天才を輩出したいという大義名分を持っているのですが、一方で普通にミュージシャンになれる筈だった若者たちを挫折させ芽を摘んでしまい、挙句の果てにノイローゼの自殺者まで出してしまってます。

これはもう社会的に許されることではないし、僕も音楽や教育でこのやり方が正しいとは決して思いません。

しかし、チャーリー・パーカーやバディ・リッチなど、ジャズに革命を起こして時代を牽引するような天才ミュージシャンは普通の教育からは生まれません。何故なら、今誰も知らない音楽を創造するのが彼らだから。

教育者も知らない音楽を教えることは不可能ですよね。

フレッチャーはその点を重々承知しているので、精神的に追い込み、”火事場の馬鹿力”が起こるのを期待していたのだと思います(それで天才が生まれるかはさておき)。

チャーリーパーカーやバディリッチを聴こう♪

セッションはジャズの物語なので、作中でのチャーリー・パーカーやバディ・リッチの名前が頻繁に出てきます。

この映画の見せ場は圧巻のラストだと思いますが、このラストはバディ・リッチの下記映像のオマージュかと思いますので、そういった意味でも一聴の価値あり!

破天荒な天才!チャーリー・パーカー

アルトサックスの革命者!いやジャズの革命者チャーリー・パーカーは若くして(34歳)で亡くなった破滅型の天才。彼がシンバルを投げられたという人です(笑)

ドラッグやアルコールに溺れ、精神病院にも何回も入っていたそうで、演奏もぶっ飛びまくりです。

ぶっ飛んだ即興演奏(楽譜もなくその場のノリでする演奏)がジャズ界に革命を与えました!

相性はバード!筆者も音楽をかじってますが、彼が出す音はもはや理論とか越えていて、頭イカレてるとしかおもえないときがあります(いい意味で)。

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ラストシーンはバディ・リッチのオマージュ?

セッションのラストシーン

ドラムソロから始まる下記ライブ映像は必見。彼は一体この演奏技術を身につけるためにどれほどの時をかけたのでしょうか?

速くて正確無比!情熱と勢いが凄すぎる!観客だけでなく、もはやバンドのメンバーまで魅了している気配です。

会場全体が彼一点を見つめている中での圧巻のドラムソロ、そしてエンディング!セッションのラストシーンは、バディ・リッチのドラムソロのオマージュではないでしょうか。

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映画『セッション』あらすじ(ネタバレなし)

バディ・リッチのような偉大なドラマーを目指すニーマン(マイルズ・テラー)はアメリカで最高峰のシェイファー音楽院で日々練習を重ねていた。

ある日学校の音楽スタジオで練習をしていると、鬼教官にして最高の指導者であるフレッチャー( J・K・シモンズ)が声をかけてきた。

声をかけられただけで認められなかったと落胆するニーマンだったが、後日ビックバンドでの練習中、フレッチャーが明日から新ドラムとして彼のバンドのスタジオに来るように言われる。。。

セッション(映画)の見どころ

鬼教官フレッチャー

セッションの一番の目玉はやはり行き過ぎた指導をするフレッチャー教官です!

頭の回転も早いのか、その時の生徒の態度や行動を一番傷つく言葉で罵ります!

もはや罵詈雑言の宝箱です(笑)。想像してみてください!彼のバンドで演奏する緊張感を!この緊張感が作品に与えた影響は大きいです。

この指導シーンを半端にしてしまっていたら、恐らくセッションはこれほど評価されていなかったでしょう。J・K・シモンズ万歳!

ニーマン

主人公・ニーマン

根暗で友達も少ないニーマン!

映画の主人公としてはかなり伏し目がちな彼ですが、何かの分野で突出する人って実際はこんなタイプの人だと思います!

オタク気質で、ドラムしかない彼。そんな彼が周囲に支えられ、人間的な成長を遂げるのでしょうか?いいえ、セッションはそんな生易しいもんじゃありません!

映画『セッション』キャスト・作品情報

公開年/制作国 2014年・アメリカ
監督・脚本 デイミアン・チャゼル
キャスト マイルズ・テラー
J・K・シモンズ
音楽 ジャスティン・ハーウィッツ
興行収入 539億円

監督は『ラ・ラ・ランド』や『ファースト・マン』のデイミアン・チャゼルです。チャゼル監督は脚本も自ら担当する新進気鋭の才人!

セッションは製作資金が足りなかったので、一度短編版を作りそれが好評だったことでスポンサーがついたらしいです。その短編もぜひ観てみたいですね♪

音楽のジャスティン・ハーウィッツは『ラ・ラ・ランド』や『ファースト・マン』でも楽曲を担当。チャゼル監督とは気が合うコンビなのでしょう!

鬼教官役のJ・K・シモンズはアカデミー助演男優賞を見事受賞しました!迫真の演技は一見の価値あり!

最後に感想まとめ!

セッションは音楽学校という舞台でありながら、友情も恋愛も排除しているところが非常に斬新だと感じました。

そこまで音楽に賭けるのが是が非か!?観ている方もいろいろ考えることができますね!

音楽以外の分野についても一流とは何か?プロフェッショナルとは何か?自問自答せずにはいられなくなりました。いろんな意味で観てよかった映画です!

セッションの良さに共感できる人も、そうでない人もコメントなどくれたら嬉しいです。