映画『ミッドナイト・スカイ』ネタバレ考察/感想,女の子アイリスの正体や宗教的な解説・評価

  • 2022年12月15日

ジョージ・クルーニーが監督・主演を務めたNetflixオリジナル映画『ミッドナイト・スカイ』は、個人的に近年稀に観る超傑作だった。

ストーリーの完成度・演技力・深いメッセージやテーマ・極上の映像美が全部そろっていて、とっても見応えがあった

あらすじを紹介し、宗教的な側面などを徹底考察していく。また意外にも評判が悪いので、なぜ酷評されているかも解説してみた。

キタコレ!まだ観てない人は、ネタバレを見る前に自分で鑑賞してから戻ってきてほしい。ちまたの評価は低いけど、僕は推したいです!SFよりヒューマンドラマ要素が好きな人向き!

映画『ミッドナイト・スカイ』ネタバレ考察/人類の滅亡と新たな世界の始まりを描いた宗教映画

Netflix ミッドナイト・スカイ

『ミッドナイト・スカイ』は、人類の滅亡と新たな世界の始まりを宇宙と北極の2つからダイナミックに描いた傑作だった。

タイトル『ミッドナイト・スカイ』の意味

ミッドナイト・スカイは直訳すると、“真夜中12時の夜”となる。(原作はリリー・ブルックス=ダルトン著の『世界の終わりの天文台(原題:Good Morning, Midnight)』。

深夜12時は日付が変わる時間だ。

つまり本作のタイトルには、人類の新しい日付の始まりという意味があるのだろう。

(↓原作小説はコチラ↓)

神を描いたとても宗教的なストーリー

本作には、キリスト教・仏教・ヒンドゥー教など、さまざまな宗教が語ってる終末信仰「いつか世界の終わりがくる」があり、惑星K-23が新たな地球となる物語だ。

とすれば、

  • 惑星移住計画の発端となったオーガスティン博士は神
  • ゴードンとアイリスはアダムとイヴ

と考えられるだろう。

テーマが明確に表現されていて、実に見応えがあった。ラストシーンも、レオナルド・ダ・ヴィンチ絵画「最後の晩餐」を想起させる。

最後の晩餐のようなラストシーン

聖書は正しかったという結論にもなる(神=人間になる点が問題かな?)。

ただ、旧約聖書を明確に否定している。

なぜ女の子なのか?旧約聖書の否定

乗組員のサンチェスとミッチェルが、「サリーのお腹の子どもは絶対に女の子だ」と語るシーンがある。女の子が生まれた方がゴードンと子孫を残せるので種の存続にとってはよいとリアルにも考えられるが、もう一つの側面がある。

アダムとイヴから生まれるカインの存在を否定しているのだ。

拡大解釈すれば、旧約聖書を否定していることになりとても興味深い

そう考えると旧約聖書が唯一経典のユダヤ教徒が怒りそうな内容だニャ。

ラストの幻オチ深掘り/人類滅亡はオーガスティン博士のせい?

吹雪の中のオーガスティン博士

人類滅亡理由が明確に語られていないので推測になるが、人類の滅亡もオーガスティン博士の研究のせいではないだろうか?

オーガスティン博士は妻と娘アイリスと離れて生活したこと以外にも、何か後悔していることがあるような印象を受ける。(ジョージ・クルーニーの演技力により、哀愁がすご過ぎたせいもあるかもしれないが)。

だから、一人で北極の基地に残ったのではないだろうか。

そう考えると人類を滅亡させたのも救ったのもオーガスティンとなり、より彼が神に近いイメージになる。

ミッドナイト・スカイの極上の映像美

ミッドナイト・スカイの極上の映像美

『ミッドナイト・スカイ』は映像も素晴らしかった。

まず、バーボー天文台基地でオーガスティンが過ごすスペースも、孤独な老人の末路という感じで入り込んでしまう。壮大な雪景色もすごい。

アイテル宇宙船の中も『2001年宇宙の旅』ばりに重力が縦横無尽で、優れたアイデアとデザインであふれている。船の中と外を長い間見ていても飽きない。(船外はジョージ・クルーニー出演の『ゼログラビティ』っぽいけど。)

船外での無重力作業では、逆さまになった状態で乗組員を映していて、これも斬新だった。

女性乗組員のマヤが死ぬシーンで、無重力でマスクの中に血の玉が浮いている映像や、真っ白な宇宙船の中で血の玉がパーっと広がるシーンが、不謹慎だが実に美しかった。新しい表現方法だと思う。

ミッドナイト・スカイが酷評される理由

巷では酷評されている『ミッドナイト・スカイ』。海外レビューサイトRottentomatoesでは、批評家の点数が51点。一般の視聴者の点数はなんと26点というかわいそうな点数だった(2021年1月現在)。

理由をまとめてみると「間延びしている」「既視感があるプロット(脚本)」というものが多かった。

既視感については、ジョージ・クルーニーが似たヴィジュアルの映画「ゼログラヴィティ」に出てたことが原因かもしれない。

間延びと聞いて世間の考えなんとなくわかった。これはもはや価値観の違いだろう。

つまり大多数の人は、ジョージ・クルーニーが北極の基地でダラダラ過ごしている描写にうんざりしたのだ。

しかし僕は、それらのシーンこそ主人公の人間を哀愁たっぷりに表現した見応えのあるものだという意見だ。彼がどんな人生を歩んできたか想いを馳せながら見れば、本作の面白さや評価が変わると思う。

映画の“間”は明らかにそれを楽しめという感じだったが、みんなそのようには見なかったのだろう。

良し悪しは言えないが、わかりやすいテンポ重視の映画が蔓延したことが原因かもしれない。

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