ネタバレ考察 映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』感想・ラスト解説,タランティーノが60年代を神格化

  • 2024年4月11日

つまらないという感想や意見も多い、タランティーノ監督の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(原題:Once upon a time in hollywood)は、個人的には傑作だと思う。

その理由を紹介していきたい。

シャロン事件が防げたなら、ハリウッドの黄金期が永遠に続いたかもしれない!

そんな映画オタク、クエンティン・タランティーノの願いを、自らが叶えちゃった作品!それが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』だ!

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、シャロン事件を軸に、その周辺の出来事を1960年代後半のハリウッドの素晴らしさと共に描き、シャロン事件の結末を変更したというストーリーになっている!

本当に、タランティーノがやりたかったことが出来た、素晴らしい傑作映画だと思う。

具体的には何をやりたかったのか?それを考察していく!?

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ネタバレ考察 1960年代ハリウッドを神話化

タランティーノが作り上げたかった黄金期のハリウッドとは一体何なのか?!

映画に盛り込まれていた部分をピックアップして考えてみよう!

俳優とスタントマンとの友情

リックとクリフ

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、リックとクリフの友情が軸に、ストーリーが進んでいく。

それは単に、俳優とスタントマンの関係という枠組みに収まらず、お互いの気持ちまで考えられる者同士の、真の友情として描かれている。

タランティーノは、仕事とプライベートの区別が曖昧だった当時のハリウッドの良さを、友情として描いたのだと思う。

現在のハリウッドでも、スタントと親しいという俳優はモチロンいると思うが、生活まで共にするような、本当の友達のような、プライベートと仕事の区別がつかない関係は、なかなか難しいと思う(スタントがパパラッチされるなどの問題もあるだろうし)。

子役とのやりとり

ハリウッドでませた子役(ジュリア・バターズ)が出ていたと思うが、自信を喪失しかけているリックとの会話のシーンも、とても興味深かい。

自分より若い俳優が出てきていることに危機感を感じ、泣いているリックを、さらに若い子役の女の子が慰めるという、非常に笑える状況なのだ。

そしてリックは、爆発力のある演技をみせ、子役の女の子に「今まで見てきた中でいちばんの演技だったわよ(8年間だけど)」と褒めらて、満足げ。

リック・ダルトン

笑えるシーンでもあるんだけど、教えられたり褒められたり、年齢なんか関係なく、役者同士、手を取り合うリックと女の子に、ジーンときてしまった。

これもまた、タランティーノが理想とする、自由なハリウッド像のひとつなのかもしれない!

レオナルド・ディカプリオと女子役

ブルース・リーもいる!最高のハリウッド

ブルース・リーが、クリフと子どもみたいな喧嘩をするという、個人的に大好きなシーンがあったが、言い換えれば、当時のハリウッドはそれだけ、なんでもアリだった!ということが伝わってきた。

ハリウッドで、アジア人のカンフー・スターと、スタントマンが白昼堂々と喧嘩するか!?最高じゃないか!?

でもまあ、この辺は、タランティーノの「こんなハリウッドがイイ!!」という夢を実現させたという感じだろう。

ブラットピットとブルースリー

ちなみに、ブルース・リーはシャロンの夫、ロマン・ポランスキーの武術の師匠で、噂によると、一時的にシャロン殺しの容疑者という目でみられたという。知り合いだからしょうがないかもね。

現在のハリウッドで撮影

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドを観た人は、クリフが運転する車から見える景色で、1960年代後半のハリウッドを、すごいリアルに再現しているなあ!と感心したことだろう。

それもそのはず。あのシーンは、本物のハリウッドの通りを映したものなのだ。

しかし、1960年代にタイムスリップして撮影したわけではない。その当時あったお店や看板を、今の通りで実際に再現して撮影しているのだ。

もはや完成度が高いという言葉を通り越して、タランティーノのハリウッドに対する愛が感じられる。

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ラストその後を考察

リックとクリフ(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)

リックとクリフはその後どうなるのか?

救急車で運ばれるクリフとリックがまた明日な!という感じで分かれるので、二人の友情はこれで終わらないという、めちゃくちゃ人間味がある、いい雰囲気で終わる(リックはそのあとシャロンの家で飲むことになる)。

二人は、これからどういう関係になるのか?

そこは観賞者が好きなように考えていい部分なのだが、リックとクリフそれぞれのモデルの経歴から、敢えて結論づけてみたいと思う。

タランティーノが考えていた結末がわかるような気がするのだ!

リック・ダルトンのモデル=バート・レイノルズ

バート・レイノルズ

レオナルド・ディカプリオ演じるリック・ダルトンのモデルはバート・レイノルズという俳優。

1959年にからTVドラマで活躍し、ワイルドで、当時のハリウッドのセックス・シンボル的存在だ。

『キャノンボール』や『ブギーナイツ』で有名。映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にも出演する予定だったらしいが、2018年に死去してしまった。

クリフ・ブースのモデル=ハル・ニーダム

ハル・ニーダム

ブラッド・ピット演じるクリフ・ブースのモデルは、ハル・ニーダムという1960年代に超活躍したスタントマン。

1970年以降は、スタントマンから映画監督に転向して『キャノンボール』『トランザム7000』などの傑作を生み出した。

リックとクリフ、二人の結末は!?

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の主役二人のモデル、バート・レイノルズとハル・ニーダムのプロフィールをみれば、リックとクリフがその後どうなったのか?わかるだろう。

クリフは、スタントマンから映画監督になり、低迷期のリックを自分が監督する映画で救ったのだ。

そう、『キャノンボール』でハル・ニーダムがバート・レイノルズを救ったように!

最後に感想・評価まとめ

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、とにかく楽しければいい!というような、エンタメ要素が売りではないし、タランティーノ監督がよく使う”クドいセリフまわし”いわゆるタランティーノ節も少ない。

つまり、タランティーノ作品をはじめてみます!というようなライト層にも受けにくいし、タランティーノのファンだったという人たちも、突き放している。

そこまでしてタランティーノがやりたかったことは何か!?

彼は、自分が好きだったハリウッドに対する気持ちを作品として残し、後世の映画好きに伝えたかったのではないか!?

結論→タランティーノは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という、バイブルを書いたのである。