Netflix映画『ノーウェア 漂流』大海原に浮かぶコンテナの中で妊婦はどう生きのびるのか?ワンシチュエーションスリラー。
作品情報・キャスト
あらすじ
ネタバレなしの感想
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
考察:構造やメッセージ
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『ノーウェア 漂流』作品情報・予告
制作国:スペイン
上映時間:109分
スペイン語タイトル:『NIRGENDWO』英題:『Nowhere』
ジャンル:ヒューマンドラマ、サバイバル、サスペンス
年齢制限:16歳以上推奨
監督:アルベルト・ピント
脚本:アーネスト・リエラ|ミゲル・ルス|インディアナ・リスタ|シアニー・ウィンスロー|テレサ・デ・ロセンド
映画『ノーウェア 漂流』キャスト
役名 | キャスト |
妊婦・ミア | アンナ・カスティーリョ(『オリーブの樹は呼んでいる』『ホーリーキャンプ』『パーフェクトストーリー』『ワイルド・フラワーズ』) |
ニコ(ミアの夫) | タマル・ノヴァス |
映画『ノーウェア 漂流』あらすじ,Netflix
政権が奪われたスペイン。資源に限りがあるため、老人、妊婦、子供を軍人が殺害する最悪なディストピアとなった。
妊婦のミアと夫のニコはスペインから逃げて他国に密入国しようと決意する。
ミアとニコは密入国業者に金を払い、貨物船に積まれるコンテナに入る。
しかし最悪な出来事が起こり、ミアは1人だけコンテナに残されることに。
コンテナを乗せた船は嵐にあい、ミアが乗ったコンテナは海に投げ出された。
ネタバレなし感想・海外評価
大海原に浮かぶコンテナの中でサバイバルする設定が秀逸。これまでみたことのない最高のワンシチュエーションですね。
妊婦が子供のためにさまざまなアイデアで生き抜いていくサバイバルにはリアリティがあり、見応えバツグンです。
積荷のイヤホンで魚をとる網を作ったり、酒でランプを作ったり、発想がおもしろいんですよ!
非常にグロテスクな場面、痛々しいシーンがあるので、残酷な描写が苦手な人は注意してください。
海外レビューサイトの評価は可もなく不可もなしという微妙なところで「脚本が安っぽくて斬新さがない」「キャラクターや設定に特筆するところがない」など厳しい意見もありましたが、私は全くそうは思いませんでした。
おすすめ度 | 85% |
世界観 | 95% |
ストーリー | 82% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.5(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 50% 一般の視聴者 77% |
メタスコア(Metacritic) | 44(100点中) |
※以下、映画『ノーウェア 漂流』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ノーウェア 漂流』ネタバレ,ラスト解説
ミアはニコと密出国用のコンテナに乗り込む。兵士たちに連れて行かれた幼い娘・ウマのことを考えていた。
ニコは別のコンテナに移動させられてしまう。
コンテナは運ばれている途中で兵士の検問を受け、上部に隠れていたミア以外は全員射殺されてしまった。
ミアはコンテナに隠れ続け、コンテナは貨物船に積み込まれた。しかし貨物船は大嵐に遭い、コンテナは海洋に投げ出される。
コンテナの下部分は海水に使った状態だった。ミアは絶望する。娘・ウマの幻影が見えた。
ミアは嵐の中で破水し、海水の中で女児・ノアを出産。娘を抱きしめて2人で生き延びることを誓った。
食料が底をつくが、ミアはコンテナの上部を開け、網で魚を取ることに成功。
ミアはコンテナの穴を開けた部分で太ももに深い裂傷を負ってしまう。しかし糸と針でなんとか傷を縫い合わせた。
ミアの携帯に夫のニコから電話がかかってくる。しかしニコは別のコンテナから脱出した際に撃たれて瀕死だと言った。
ミアは「昨日より愛してる」と言った。ニコは「でも明日以下だ」と別れの言葉を残して電話を切る。
コンテナに水が溜まってきたため、ミアはそろそろコンテナから脱出しようとイカダを作った。
夜の嵐でミアはコンテナごと沈みそうになるが、なんとか脱出。大きな鯨の導きでイカダの上に乗っていたノアを発見し、そこまで泳いでいく。
翌日、漁師の船が海上にいるノアを発見。海中に沈んでいたミアに心肺蘇生をする。
ミアは息を吹き返した。そして娘と一緒に生きのびたとわかって泣いた。
『ノーウェア 漂流』終わり
映画『ノーウェア』ネタバレ感想・評価
妊婦のミアは夫と離れ離れになり、コンテナごと海に落下して漂流することに。
ミアは嵐の中で裸になってなんと海水に出産。胎内から子供が出てくるシーンがはっきり映されています。(全裸で演じきるアンナ・カスティーリョの女優魂がすごいですね。)
ここまで映すのか!!とびっくりしましたが、母と子、そして生命の神秘に胸を打たれました。
コンテナを旧約聖書のノアの方舟に見立てる宗教色の強い本作。そのコンセプトは、漂流サバイバルの中で出産や授乳を生々しく描き、生命の神秘を浮かび上がらせることだと伝わってきます。
昨今は「映画で女性の裸を映しすぎるのは女性の性的搾取だ!」と捉えられる傾向がありますが、リアルに見ないとわからないこと、伝わってこないこと、リアルに見るからこそ伝わる尊いものがあると感じました。
単にサービスとして女優を裸にさせるような低俗な作品ではありません。
宗教を超えて、人間が命をつなぐ美しさで画面がいっぱいになる神々しい作品だったと思います。
ドリルでコンテナの天井に四角く穴を開け、そこから光がもれてミアにかかります。聖母マリアの絵画並みに美しいです。
美しさだけではありません。グロテスクさも兼ね備えています。
コンテナの中で飢えたミアは出産の際の胎盤にまでかじりつきます…。食料がないので仕方ないとはいえ、スプラッターホラー顔向けのグロさです。
赤ちゃんのウ○コで魚をおびきよせて網で捕まえる流れもちょっと気持ち悪いですが、サバイバルではちゃんとウ○コで魚をおびきよせる手法があります(冒険家のエド・スタフォードがやってました)。リアルにサバイバルさせていると思いました。
生きることって汚いことも多いですよね。
そんなこんなで今年観た映画の中で衝撃度はNo.1でした。
夫・ニコとミアの「昨日より愛している」「でも明日以下よ」のセリフも心に沁みましたね。
明日になればもっと愛が深まっていることを確信する泣けるセリフでした。
映画『ノーウェア 漂流』考察
タイトルの意味:重要なのは場所でなく母子の絆
タイトルのNowhereは「どこでもない」いう意味です。普通に考えて「どこでもない海洋のど真ん中」を指しています。
この「どこでもない海に浮かぶコンテナ」が、母子の愛によって意味のある場所に変わったのが本作のテーマでしょう。
母・ミアと赤ちゃん・ノアの絆によって、海洋のコンテナが母子の愛がはぐくまれる唯一無二の場所に見えてくるのです。
「世界で最悪の場所にいても、愛する人と一緒なら見える景色は変わってくる。生きる希望やパッションが湧いてくる。」
そんな人生において重要なメッセージを追体験させてくれる映画だったと思います。
メタ構造によりアートに
『ノーウェア 漂流』は、何重ものメタ構造によって芸術性を帯びています(ここがやはり芸術大国スペインっぽいと思いました)。
海は女性的なものです。コンテナなど中が空洞なものも、女性的なものの象徴としてあつかわれます(フロイト心理学などでは)。
さらにミアはコンテナの中にある木箱の中に入っています。さらにミアの中にも子宮があります。
女性的な空間で女性・ミアが囲われているマトリョーシカのような入子構造ですね。(4重構造かな)
そう考えると生まれた赤ちゃんが女の子だったことも、この多重構造を構成するためのように思えます。
コンテナの内側から外へ脱出するシーンも出産のメタファーになっていますし、死んだ娘・ウマに囚われた人生からの脱出にも感じられます。アートとしてもすばらしい作品ですね。
(なぜメタ構造が芸術的なのかは、視聴者の思考が複層的になるから、構造に美しさと物語性を感じるからなどの理由があります)
最後のまとめ
スペイン映画『ノーウェア 漂流』は、コンテナで海洋を漂流する絶望的な状況下において母と子供の愛を浮かび上がらせ、芸術的なコンセプトも付け加えたすばらしい作品でした。
賛否両論あるかもしれませんが私は傑作だったと思います。
こういう美しいけど生々しさやグロテスクさがある作品はなかなか大規模に劇場公開できないですが、Netflixならできます!
世界各国の個性的な作品を日本、沖縄の自宅に届けてくれるネトフリに感謝です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix『ノーウェア』レビュー終わり!
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