映画『市子』ネタバレ時系列,ラストシーン考察「鼻歌,花火,雨」意味やその後,無国籍の理由解説

  • 2024年7月15日

映画『市子』プロポーズされた翌日に失踪した存在自体が謎の女性・市子をめぐるサスペンス・ヒューマンドラマ!

シネマグ
すげえヤバい映画だった…市子の謎を徹底考察していきますよ!

なぜ無国籍なのか?法律。物語ネタバレあらすじ・ラスト結末まで時系列で解説

考察:ラストシーンの解釈、雨や花火の意味

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『市子』面白かった?

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作品情報・キャスト

公開:2023年12月8日
上映時間2時間6分
ジャンル:サスペンス・ヒューマンドラマ
監督・脚本戸田彬弘
原作:戸田彬弘の同名戯曲
撮影:春木康輔
音楽 茂野雅道
キャスト↓
杉咲花
若葉竜也
森永悠希
倉悠貴
中田青渚
石川瑠華
大浦千佳
渡辺大知
宇野祥平
中村ゆり

※以下、映画『市子』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『市子』ネタバレあらすじ・時系列で解説

※映画本編は時系列の入れ替わりがあるので、わかりやすく時系列で記載。ライトな解説

無戸籍の理由:離婚後300日問題

明治からの法律:離婚後300日問題(元夫と離婚してから300日以内に生まれた子供は、出生届を出すと戸籍上は元夫の子供になってしまう)。これのせいで1987年に生まれた川辺市子は無戸籍になる

シネマグ
母・なつみの元夫がDV男で近づけないとか、出奔したとかの理由で元夫の戸籍に入らない手続きができなかったため、出生届を出さなかったのでしょう。

市子のケースでは母・なつみの元夫が「俺の子じゃないよ」という手続きを裁判所でしてくれない場合医師による離婚後の妊娠の証明か、元夫とずっと別居していた(刑務所にいた)証明が必要で、ハードルが高いです。

手続きに金や労力をかければ何か方法もあったかもしれませんが、当時のなつみにとっては現実的ではなかったのでしょう。

市子の幼少期

市子には3歳年下で戸籍のある妹・月子がいたが、月子は難病筋ジストロフィーにかかって寝たきりの生活だった。

母のなつみは、市子に外では月子と名乗るように言い、月子のフリをさせて小学校に4年生として編入させる。実年齢は3歳上。

6年生の山本さつきは幼少期に同じ年で友達だった市子が、月子という名前で低学年になっていることに違和感を覚える。

母なつみはスナックで働いており、ソーシャルワーカーの小泉雅雄と恋仲になる。

市子は幸田梢という女の子と仲良くなって、「本当の名前は市子だ」とポロッと口にした。

高校:北秀和

市子は月子になりすましたまま、中学、高校と通学する。高校では、田中宗介というクラスメイトと付き合っていた。

市子のことが好きだった北秀和は、彼女を自宅まで送り届けたあと市子が小泉と部屋で言い合いしているのをベランダから目撃。

市子が月子を殺したことで口論になっていた(難病で寝たきりの妹・月子の介護に疲れて呼吸器を外した)

市子は小泉に乱暴されそうになり、ナイフで彼を刺殺したのを見てしまう。北は小泉の死体を線路に運び、自殺に見せかける。その後すぐに、市子は失踪した

その後、1人暮らししていた市子はパティシエ志望の吉田キキと仲良くなり、将来一緒に店を開く計画を立てる。

北がやってくる。市子は「もう構わないで」と言った。北は「お前は悪魔やで」と言った。

現在:長谷川義則

市子は長谷川義則と祭りの屋台で出会って交際し、その後同棲。しかし長谷川から婚姻届を渡された翌日に失踪する(映画の冒頭)

長谷川は後藤刑事から「市子は存在しない。無国籍だ」と聞かされておどろき、彼女の行方を探す。

長谷川と後藤は北の家へ行く。市子が滞在していた形跡があった。

その後、長谷川は市子の母・なつみに会いにフェリーで徳島へ。なつみは“やまうらみちこ”という偽名を使い、DV男と一緒に暮らしていた。長谷川はなつみから、市子が月子を殺したことを聞かされる。

市子は北に頼んで自殺掲示板で知り合った冬子を夜の海まで連れてきてもらう。

しばらく後、海から2人の死体が発見された(車で突っ込んだ)。

冬子は海沿いを鼻歌まじりで歩いている。

映画『市子』終わり

映画『市子』考察

市子が失踪した理由

市子が失踪したのは、月子の遺体発見で自分の殺人罪がバレる可能性があるから。さらに最愛の長谷川との婚姻届を出すことが不可能になりショックを受けたからだろう。

市子は長谷川にプロポーズされた当日は嬉しそうだった。

しかし翌日のニュースで自分が殺した妹・月子の白骨化死体が見つかったことを知る。

今後は月子の名前を使えない。どうやっても婚姻届を書くことができない。それに長谷川に殺人犯だとバレる可能性がある。それで失踪したのだろう。

月子の死体が発見されてないなら、本名は月子だとか、長谷川に適当な嘘をついて誤魔化して婚姻届を出せるかもしれないが、月子が死亡処理されるのでそれは叶わない。

自殺志願者:冬子を殺した理由

結論からいうと、市子は冬子の死で自分の死を偽装しつつ、戸籍などの証明書を利用したかったのだろう。

冬子の死で市子が死んだと見せかければ、後藤刑事に追われずにすむ。さらに冬子の戸籍を利用できる利点もある。

冬子は北と一緒に死んだ。おそらく北の身元がわかるものはポケットとかに入れられており、後藤刑事が「北の横にある死体は市子だろう」と思わせる算段だったのだと思う。

北は市子に殺されたわけではなく、市子のヒーローになるために自らを犠牲にしたのだと考える

冬子は「親もいないし、友達もいない」と言っていた。死体は海に突っ込んだので損壊が激しく顔の判別はできないだろう。そもそも冬子を探す人もいない。市子が冬子の健康保険証や戸籍謄本を利用しても、気づくものはいない

冬子は「大丈夫ですよ、ウチ」と北に話した。自分を殺してくれと頼んでいるだけなら「大丈夫ですよ」はちょっと変だ。「大丈夫」は何かしら頼まれた場合に使う言葉だからだ。

冬子は市子から、「自殺したいなら手伝ってあげるから私の身代わりになって死んでほしい。戸籍も利用させてほしい」と頼まれていたのだろう。だから「大丈夫です」という言葉が出たのではないか。冬子から書類なども受け取っていたのだと思う

ラストの歌の意味:結婚できる

冒頭とラストでは市子が歩きながら「虹」という童謡を鼻歌で歌う。海には虹が見える。

ラストはいろいろな解釈ができるが、1番救いようのある解釈は戸籍を手に入れたことで長谷川との婚姻届を提出できるというもの。

「虹」の歌詞は、雨があがって、虹がかかって、きっと明日はいい天気という内容。

ポジティブな歌詞なので、市子は許されない行いにさいなまれながらも、長谷川との前向きな未来を目指すのではないか?

長谷川なら市子のすべてを知ったうえで警察などに突き出そうとはせず、彼女を救いたいと考える気がする。婚姻届も冬子として出すことができる。戸籍にも夫婦であることが記載され、新しく作られる

カタチだけかもしれないしいずれバレてしまう可能性もあるが、戸籍で苦しんできた市子にとっては重要なことなのだろう。

ただ、この「虹」の鼻歌は市子が月子を殺したときに、母・なつみも口ずさんでいたので、市子が何とか生きていくために誰かを殺害したときのテーマソングである可能性も否定できない。

北と冬子を殺したという「雨の出来事」から解放された意味合いで「虹」を歌っていたのかもしれない

花火と雨の意味

花火と雨から市子の視線から心理状態を紐解ける。

市子は花火が好きな理由として、「みんなが上を向いていると安心する」と言った。地面にはいつくばっているかのような無国籍の自分に誰も気づかなそうでホッとするのだろう。

市子は常に他人から「おまえは月子ではない!無国籍だ!」とバレるのを恐れていたのだと思う。

みんなと同じ目線ように前を向けるのは、みんなの目線が夜空にあるときだけなのだ。

また、北と一緒にいる時には雨を浴び、「全部流れてしまえ!」と言っていた。自分の存在も世界もすべて消えてほしいという思いがあったのだと思う。

それと同時に、雨のときはみんな傘をさし、下を向いて歩く。市子を見るものはいない。市子が堂々と空を見上げることができる唯一の時間なのだ。

最悪のバッドエンドだとしたら

ラストはバッドエンド的な受け取り方もできる。

市子にはサイコパス的な側面もあるので、長谷川とも再会せずに一生孤独に生きていくのかもしれない。

市子が狂気に触れているとしたら、長谷川は最愛の人だけど、事実を知っているからと北のように殺してしまうかもしれない。

自分で自分を殺した市子

市子は10代の多感な時期を月子という名前で過ごしていた。そして月子の介護に疲れ、呼吸器を外して殺害してしまう。

市子は月子だったわけだから、月子が月子を殺した…つまり自分で自分を殺すような感情もあったと読み取れる。

市子が月子の呼吸器を外すときの表情は深淵そのものだった。自分で自分を殺し、存在自体がブラックホール化したような表現だった。

映画『市子』ネタバレ感想・評価

映画『市子』の評価は88点。

無戸籍という社会問題を上質なサスペンス・ヒューマンドラマに仕上げた点が素晴らしいです。

2022年の『ある男』もアイデンティティを問う似たテーマでしたが、それに続く良作だと思いました。

本作の何が怖いのかって、結局は市子がどんな人間かわからないところなんですよね。

妹を殺害したり、義父の小泉を殺したり、北と冬子に自殺を命じたりと、サイコパスであるいっぽう、キキに感化されて将来スイーツのお店を開きたいと言ったり、長谷川との思い出に浸って涙を流したりと純粋な部分も持っています。

想像を絶する境遇によって感情がドス黒くなっている部分と、まっさらな部分がクッキリ分かれているようです。存在自体が揺れているイメージですね。

無戸籍という存在の曖昧さがしっかり描かれていた点においては、他の追随を許しません。それだけでなくサスペンスやヒューマンドラマとしての多少のエンタメ性もあるバランス感覚が本当にすごいと思いました。

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