映画『義足のボクサー Gensan Punch』。鬼才ブリランテ・メンドーサが沖縄の義足のボクサーがライセンスを取るためにフィリピンで奮闘した実話を映像化!
作品情報・キャスト、あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価、を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『義足のボクサー Gensan Punch』作品情報・キャスト解説
原題:『Gensan Punch(ジェンサン・パンチ)』
ジャンル:ヒューマンドラマ,ボクシング
監督:ブリランテ・メンドーサ
脚本:ホニー・アリピオ
撮影:ジョシュア・A・レイレス
音楽:ディワ・デ・レオン
製作:「義足のボクサー GENSAN PUNCH」製作委員会
登場人物・キャスト
津山尚生|cast 尚玄
ルディ(トレーナー)|cast トニー・ラザロ
尚生の母|cast 南果歩
メリッサ(ジムオーナーの娘)|cast ビューティー・ゴンザレス
タク(ジムメイト)|cast 金子拓平
主演の尚玄さんは、私が端役で参加したとある現場で間近で見たことがあるのですが、出演者待機場所が結構広かったのもあり、尚玄さんは暇な時間そこでずっとシャドーボクシングしていてたのを覚えています。
ずっとボクシングジムに通っているらしいですね。本作でも40代とは思えないバキバキのボディを披露!
あらすじ
幼い頃に事故に遭い右足の膝から下を失った津山尚生(尚玄)は、プロボクサーを志し、沖縄の平仲ボクシングジムで日夜練習に励んでいた。
しかし日本ボクシングコミッション(JBC)では、身体上危険だという理由からプロライセンスの発行が不可能だとわかる。
尚生はプロのライセンスが取れる可能性があるフィリピンへ飛び、ジェンサン(ジェネラル・サントス)という街のジムに入門。
トレーナーのルディはクセのある人物だが、尚生の指導を熱心に行った。
ジムの練習生たちは皆泊まり込みで仲もよく家族のようだ。尚生はオーナーの娘・メリッサに惹かれていく。
ルディの口利きで、尚生アマチュアの試合で3連勝すればプロのライセンスが取れることになるが…。
『義足のボクサー』ネタバレなし感想・見どころ・海外評価
ハンデを背負った主人公の葛藤を描いた熱いスポ根映画でもなく、障害者の社会問題を全面に押し出した作品でもありません。
フィリピンの街や人々をヴィヴィッドに切り取った作品です。
ぶっちゃけ見る人によって完全に賛否わかれると思います。
おすすめ度 | 60% |
フィリピンの雑多な世界観 | 80% |
ストーリー | 50% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.7(10点中) |
※以下、『義足のボクサー Gensan Punch』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『義足のボクサー』ネタバレ感想・評価
良くも悪くもスポ根や成長譚ではない
主人公である義足のボクサー・尚生と、見ている自分を重ねて共感するタイプの映画ではありません。
障害を抱えるボクサーが異国の土地で夢のために奮闘するというストーリーで、主人公と心理的に距離を置く選択したこと自体が良くも悪くも挑戦的。
簡単にいうと、『ロッキー』シリーズのコンセプトとは全く異なり、街の雰囲気を含めた大きな視点で主人公の動向を見守るドキュメンタリータッチな作品です。
私が本作で感じた良い点は、フィリピンのジェンサン(ジェネラル・サントス)の雑多な雰囲気、すぐに家族としてフランクに接してくれる人の良さでした。
フィリピンの貧困地域の雑多な雰囲気や、現地の人々の陽気さが伝わってきます。
一方、義足のボクサー・尚生については、トレーナーのルディが八百長を仕組んでいた箇所意外に感情吐露がないなど、彼とジェンサンがどのように融和したのかを切り取った作品といったほうが近いでしょう。
沖縄とフィリピンの対比もあり、異なる2つの土地で夢を追う青年の希望と絶望が諸行無常の視点で撮られています。
ジェンサンという街を知る上では見て良かったですが、全体的にカタルシスもなく、個人的には面白いと思えませんでした。
義足のボクサーの物語として気になるラスト
ラスト結末までの流れは↓
- 義足のボクサー・尚生はフィリピンでライセンス獲得成功
- 日本ではやっぱりライセンス発行無理
- ボクサーはあきらめ、母の経営する沖縄そば屋を手伝う
という展開でしたが、「フィリピンでライセンスが取れたのならフィリピンでならプロの試合できるのでは?」と大きな疑問が湧きました。
最後の試合では義足に足をかけられたり押されたりなど、「義足ではやっぱり上を目指すのは無理」ということで引退したのか?など想像はできます。
ただそれでも、ラストがふわっとしすぎてて主人公が具体的にどんな想いで夢をあきらめたのかよくわかりません。
沖縄に戻った経緯も具体的には不明です。
現実の苦さが抽象的に伝わってはきますが解決感が乏しく、やはりドライなドキュメンタリーのようでした。
ボクシング演出が残念
ブリランテ・メンドーサ監督はスポーツ映画を撮るのは今回が初めてのようです。
アクション得意じゃないのかな?とも思いましたし、何よりボクシング場面が悪い意味で常識を覆すような演出・編集だったのがすごく気になりました。
1番気になったのは、ボクシングの試合中に今何ラウンドなのかわからない場面が多かったこと。
ボクシングはラウンド制の競技で、ラウンドによって作戦・心理、さらに見る側の心情まで大きく変わります。
ボクシング観戦が好きな私にとっては悪い意味で斬新でした。
野球に例えると現在何回の攻防なのか不明な状態で、2塁打を打たれるイメージです。
ピンチなのか、まだ余裕があるの判断できませんよね。
このことからも、やはりボクシングは重きを置いてないとわかります。
伝説的なパッキャオや5階級制覇のノニト・ドネア(2022年6月7日に井上尚弥と試合)など、名チャンピオンを生み出しているフィリピンですが、ブリランテ・メンドーサ監督自身は別にボクシングが好きなわけではないのでしょう。
少しでも好きであれば、絶対に現在何ラウンドなのか細かく伝えるはずですから。
流れがぶつ切りで、主人公がどれくらいピンチなのか不明なのは残念でした。
映画なので、ボクシングという競技を重要視しない撮り方でも別に良いとは思います。
ただヒューマンドラマ要素についても結構ぶつ切りな展開で、やはり本作はフィリピンの街・人々の魅力を伝えるドキュメンタリーの側面が強いと感じました。
最後のまとめ
映画『義足のボクサー Gensan Punch』は、熱いヒューマンドラマと見せかけてドキュメンタリータッチの渋すぎる挑戦的な作品でした。
個人的にはもう少しスポ根よりにするか、社会問題を提起するかしたほうが良かったと思います。
ただ、ブリランテ・メンドーサ監督の強烈なオリジナリティは商業映画が跋扈する現代において貴重であり、評価すべきでしょう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『義足のボクサー Gensan Punch』レビュー終わり!
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