映画『エスター2 ファーストキル』。2009年の第1作に引き続き、イザベル・ファーマンがエスターを演じます。
作品情報・キャスト
ネタバレなしの感想
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
ストーリー深掘り考察
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから観る方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
映画『エスター2 ファーストキル』作品情報・予告
制作国:アメリカ
上映時間:99分
原題:『Orphan: First Kill』
ジャンル:ホラー・サスペンス
年齢制限:15+(暴力シーンあり,15歳以上対象)
監督:ウィリアム・ブレント・ベル
脚本:デヴィッド・コッゲシャル(『スクリーム』TVシリーズ)
全世界興行収入:約48億円(2023/03/31時点)
監督は映画『ザ・ボーイ人形少年の館』で有名なウィリアム・ブレント・ベル。B級ホラーが得意な人です。
映画『ザ・ボーイ人形少年の館』は、ウォーキング・デッドのローレン・コーハンが出演している!ということで視聴してみた。 まあまあのホラーサスペンス作品だったので、あらすじをネタバレありで解説し、何が伏線になっていたか考察してみた。 […]
やはりエスター2も第1作のジャウム・コレット=セラが監督をつとめるべきでした…。
今回は個人的にサスペンス・ホラーの最高峰とも思える映画『エスター』について、ネタバレなしの見どころや感想、ネタバレありの評価・考察などを徹底レビューしていきます。 ↓続編『エスター2 ファーストキル』の感想レビューはコチラ↓ [[…]
『エスター2』キャスト
イザベル・ファーマンはもうすっかりエスターの女優という感じですね。『ハンガー・ゲーム』にも出演してましたが、エスターが『ハンガー・ゲーム』に出てる!という印象しかありません。アンソニー・ホプキンスを見てハンニバル・レクター博士だ!と思ってしまうのと一緒です。
エスターの母・トリシア役を好演したのはジュリア・スタイルズ。顔が怖くて役にピッタリ。『ボーン・アイデンティティー』や『ハスラーズ』(2019)に出演しています。
父・アレン役はロッシフ・サザーランド。ドラマ『ER緊急救命室』『REIGN/クイーン・メアリー』で有名な人です。
エスターのク○兄貴・ガーナーを演じたのはマシュー・アーロン・フィンラン。
刑事ドナン役は金川弘敦(かながわ ひろのぶ)さんという海外で活躍する日本出身の俳優です。
『エスター2 ファーストキル』あらすじ
エストニアの精神疾患を抱える患者を隔離している療養所にアナという美術療養士がやってくる。
アナが療養所の初勤務の日、院長は「リーナという凶暴な患者が逃げた」と言った。アナは自分が今いる暗い部屋の奥で絵を描いている少女を見つける。少女は「リーナ」と名乗った。アナは驚いてあとずさる。院長やスタッフがリーナを捕まえて病室に入れたが…。
いっぽうアメリカのオルブライト家に、4年前に行方不明になった娘・エスターがロシアで発見されたと連絡が入る。
母・トリシアがロシアまでエスターを迎えに行く。トリシアはエスターを抱きしめてアメリカへ連れて帰った。
エスターは「誘拐されてロシアで暮らしていた」と話す。父・アレンは泣いてよろこんだ。しかし息子のガーナーは何か違和感を抱いているようで…。
ネタバレなし感想・海外評価
1作目ほどの完成度の高さはありません。
ストーリー自体は面白くなくはないですが、いろいろツッコミどころが多くリアリティラインも低め。
コンセプトの良さや、ところどころゾクっとするシーンもあり個人的には嫌いじゃなかったです。ただ「映画館に見に行ってくれ!」と胸をはってオススメしずらい内容・クオリティでした。
海外レビューサイトの評価もそこそこ。本当にそこそこというのが妥当な評価だと思います。
おすすめ度 | 58% |
世界観 | 76% |
ストーリー | 70% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.9(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 72% 一般の視聴者 77% |
メタスコア(Metacritic) | 54(100点中) |
※以下、『』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『エスター2 ファーストキル』ネタバレ感想・評価
設定やアイデアは良い
リーナがエストニアの隔離施設から逃げ出して、子供の行方不明者・エスターになりすました→母親・トリシアはエスターが4年前に兄ガーナーに殺されたことを知っており、エスターの死体も隠蔽したので、偽物だと最初から気づいていた。
この設定はすごく良かったと思います。
冒頭のエストニアの施設での一連の流れはすごく良かったです。
新人スタッフのアナが電気がチカチカする部屋でかわいい女の子だと思って近づいたら、逃げ出した凶悪犯・リーナ(エスターの本名)だったというゾクっとするシーン。
アナが家についたら車のボンネットが空くシーン(逃げたリーナが乗っていた)も素晴らしいアイデアだったと思います。リーナが逃げ出した時点でスタッフの車の中まで確認しないのか?という細かい疑問は湧きますが、オープニングはサイコホラーとしてパーフェクトな出来でした。
リーナが行方不明のエスターになりすます流れも「こういうことだったのね!」と一応納得できます。
さらに、アメリカにきたエスターが自分を怪しむドナン刑事を殺害し、母親・トリシアがやってきてエスターでなくドナンを撃つシーンも衝撃的です!
まさか母・トリシアが過去に息子・ガーナーが殺してしまった娘エスターの死体を処理していて行方不明に見せかけていたとは!
いろいろツッコミどころはあるものの、それに目をつむれるくらいは面白かったです。中盤までは…。
ダメだった点
エスター2はディティールが微妙すぎて、ストーリーに没頭できなかったのも事実です。
1番ひどかったのはエスターとトリシアのラストの格闘のシーン。エスターはボウガンでガーナーを殺したなら、トリシアもボウガンで殺せばよかったのに。ボウガンどこいったの?
この2人の対決は八百長試合みたいで緊張感がありませんでした。
あとは2人一緒に屋根から落ちそうになるシーンもワザとらしすぎました。さらにそこにタイミングよく父親・アレンが帰ってきます。
「アレンが妻・トリシアでなくエスターを助けてしまった!」という皮肉的な結末をやりたいのはわかります。しかし演出の細かい部分にリアリティがなく、ご都合主義な展開に見えてしまいました。
細かい点をいえば、ドナン刑事が家にやってきた際に外にいたエスターはすぐ自分の部屋に戻れば、ドナン刑事が指紋の着いたレコードを持ち去るのを防げたのでは?
あとひどいのが、エスターファーストキルのポスターに、「母親は知っていた。娘が別人であることを」と1番重要なネタバレが書いてあるんですよね。少なくてもサスペンスで1番重要な要素を堂々とネタバレしてます…。
幸い私は映画鑑賞後にポスターを見たので良かったですけど、予告とかポスターとか事前にみた人は楽しみが半減すると思います。
エスターファーストキル 考察(ネタバレ)
母の犯行を知っていたドナン刑事
ドナン刑事はエスターにブスブス刺されたあとに、「母親のトリシアはお前が偽物だと知っている」と発言していました。
ドナン刑事本人が「偽物だと知っている!」わけではなく、「母親が知っている!」との言葉。
察するに、ドナン刑事はエスターが行方不明じゃなく殺されており、母親が死体を隠蔽していたことに勘付いていたのでしょう。
しかし証拠がなく、立証できなかったのだと思います。
だからエスターがロシアから帰国したとき、すぐ偽物だと気づいたのです。
本物のエスターの悲しい人生、因果応報
本物のエスターは4年前に兄・ガーナーにいじめられて、暴力を受けたはずみで死んでしまったようです。
エスターは生前セラピーに通っていました。ということは、4年前にすでに兄のイジメで心に傷を負っていたのでしょう。
母親のトリシアは代々の名家を守るためにイジメを見てみぬフリをしていたのかもしれません。
4年前は父親・アレンもまだ画家として働いていて各地を飛び回り、息子が娘をイジメていると気づかなかったのでしょう。
家族に殺されたうえに、なりすまされる…本物のエスターは散々な人生です。
リーナがエスターになりすまして家族を皆殺しにする結末も、本物のエスターの呪いと考えると面白いです。
まるでリーナにエスターの怨念が乗り移って、殺人鬼・エスターが誕生したかのよう。
兄が妹を殺して母親が隠蔽…家族が家族を殺した穴が、エスターという化け物によって贖(あがな)われる。結果はエスター以外は全員死亡。
フロイト的な解釈だと家族が娘を殺したトラウマがそのまま、エスターという怪物として表面化したとなるでしょう。
エディプスコンプレックス
エスターは子供が親に対して性的な感情を抱いてしまうエディプスコンプレックスの物語(エスターは女なのでエレクトラコンプレックスとも言える)と解釈することもできます。
(エディプスコンプレックスとは幼少期に親を手に入れたいために、男の子は父親を、女の子は母親を憎んで葛藤する心理。心理学の父・フロイトが提唱した説です。父親殺しの欲望とも言われます。)
2009年の『エスター』第1作もそうでしたよね。コールマン養子になったエスターが夫のジョンを手に入れたいという欲望があり、最後はケイトと戦います。
ここがエスターというキャラクターが優れているポイントです。
エスターは体が成長していないけど心は大人ですが、より正確にいうと体の未発達によって性的な衝動もねじ曲がってしまった人物なのです。
ラストは第1作の別エンディング
『エスター2 ファーストキル』のラストはエスターが火事になった屋敷から可憐(かれん)に登場するというものでした。
これは2009年の第1作の別エンディング「エスターが生きていたバージョン」(採用されなかった)に似ていますね。第1作の別エンディングを参考にファーストキルのラストが作られたのかもしれません。
エスター1の別エンディングは下記動画をご視聴ください↓
映画『エスター2 ファーストキル』ネタバレあらすじ解説
エストニアの療養所の事件
新スタッフ・アナは院長から、「リーナが成長ホルモンの異常によって低身長で子供の見た目だが実年齢は31歳で、子供の見た目で犯罪を繰り返していた一級の詐欺師だ」と聞かされておどろいた。
リーナは身寄りのない子供を装ってある家族に寄生し、皆殺しにしたこともあるらしい。
リーナの首や手首にある傷は、この療養所にきたときに拘束具をつけられた状態で暴れてついたものだ。
その日の夜、リーナは見張りを誘惑して自分の部屋の鍵を開けさせて撲殺。彼の死体からカードキーをもぎ取り療養所の厳重な扉を開けていく。
リーナが脱走し、療養所はパニックになった。リーナは別の患者を操って警備員を襲わせ、そのすきに外へ出た。
アナはこの療養所には勤められないと院長に告げる。
アナが帰ると車のトランクが勝手にひらいた。階段の上にリーナが立っている、アナはリーナに撲殺(ぼくさつ)された。
リーナはアナの部屋に入り、パソコンで調べものをした。アメリカで4年前に行方不明になった少女・エスターと自分が似ていると気づき、彼女になりすますことにした。
エスターの家族の衝撃事実
ロシア近郊で発見されたエスターを母・トリシアが迎えにくる。4年もの月日が経過しているのでトリシアは気づいていないようだ。
アメリカの空港で父・アレンと兄・ガーナーが迎えにきて再会を喜んだ。
エスターはなるべくボロが出ないように行動するが、行方不明になる前に通っていた心理カウンセラー・シーガーの部屋にいる鳥の名前を間違えて怪しまれる。
エスターの行方不明事件を追っていたドナン刑事は、エスターの突然の帰還を怪しんだ。
エスターはドナン刑事に写真を隠し撮りされていることに気づく。
ドナン刑事はトリシアとアレンの不在時に家にやってきて、エスターの指紋が着いたレコードを持ち去る。
ドナン刑事は家で本物のエスターとレコードの指紋が一致しないと気づいた。
エスターはドナンに偽物だとバレたと気づき、彼の家へ行って刃物で何度も刺す。
帰ってきてエスターが家にいないことに気づいたトリシアが、エスターの日記を見てドナン刑事の部屋へ駆けつける。
トリシアはまだ生きてもがき苦しんでいるドナンを銃で撃ち殺した。
トリシアはそばにいたエスターに銃を向ける。
トリシアは真実を話す。本物のエスターは4年前に兄・ガーナーがいじめすぎて殺してしまい、死体を隠蔽したのだという。
トリシアはエスターに、「家のためにこのまま娘のふりを続けろ。でなければ正体をバラす」と言った。
エスターとトリシアはドナン刑事の死体を深い穴へ落とした。そこはかつて本物のエスターが葬られた場所だった。
衝撃のラスト結末
画家である父・アレンは娘のエスターが絵を描けるようになったことに喜び。アトリエで一緒に絵を描く。
エスターがアレンに性的な感情を抱いていると気づいたトリシアは「夫に近づくな」と忠告した。
トリシアとガーナーはエスターが危険だと考え、彼女を葬ろうと画策する。
エスターはその気配に気づいていた。
画家のアレンが画商との話し合いのために出張する。
エスターは父を見送った駅で逃げようとするが、警察に捕まり家に連れ戻された。
夜、エスターはガーナーに殺されそうになるが、逆にボウガンでガーナーを撃ち、刃物でめった刺しにして殺害。
息子を殺されて怒り狂ったトリシアがエスターに襲いかかる。エスターは屋根に逃げた。トリシアと屋根の上で取っ組み合いになり、2人とも落ちそうになる。
台所の火が燃え移り、1階は大火事になっていた。
エスターが逃げ出したと聞いて帰ってきたアレンは、エスターを先に助けた。トリシアは屋根から落下して死亡。
アレンはエスターが入れ歯だと気づき、バケモノ呼ばわりした。エスターはアレンを突き落とす。
家事の中、生き残ったエスターが消防士や警察のまえに現れた。
かわいそうな孤児となったエスター。エスターの可愛らしさをみた児童施設の職員たちは「養子縁組の話がすぐくるだろう」と話した。
『エスター2 ファーストキル』終わり!
最後のまとめ
『エスター2 ファーストキル』は、アイデアやコンセプトは良かったものの、全体的にリアリティラインが低めでB級ホラーっぽい感じが拭えませんでした。
とくにエスターとトリシアの最後の取っ組み合いがプロレスみたいで、もう少しマシな演出はなかったのか?と感じてしまいました。
前作のジャウム・コレット・セラが監督していれば…。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『エスター2』(Orphan: First Kill)レビュー終わり!
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