スペインの社会派ホラー映画『プラットフォーム』(2019)のストーリーの意味、結局何が言いたかったのかを徹底考察していく。
映画『プラットフォーム』ラスト結末までネタバレ解説
48層にいたゴレンは目覚めると第171層にいた。ベッドに縛りつけられている。トリマガシのしわざだった。
トリマガシはここまで食料は来ない。食用カタツムリのように10日かけてお前の腹をきれいにし(排便させる)、それから肉を食い始めると語った。ゴレンは叫ぶがトリマガシは、俺のせいじゃない、上の者のせいだと言った。
10日たちゴレンは衰弱した。トリマガシはとうとう包丁でゴレンの太ももの肉を切り取る。そのとき、テーブルが降りてきた。乗っていたミハルがトリマガシを刃物で刺した。ゴレンはミハルから包丁を渡され、トリマガシを何度も刺して殺害。ミハルは肉を切り、ゴレンに食べさせる。ミハルはトリマガシの拘束をといてまた下へ降りていった。
翌月、ゴレンは33層にいた。もともとVSC(垂直自主管理センター)に25年間勤めており“穴”に入るものを面談する仕事をしていたイモギリが同室の相手だった。イモギリは末期癌を治療するために自主的に“穴”に入って認定書をもらうのだという。
イモギリはラムセス2世と名付けた犬(ダックスフンド)を持ち込んでいた。ゴレンがドンキホーテの本を持っているのを見て、本を持ち込む人間は初めてだと驚く。
33層では食料は全く不足はないが、博愛主義者のイモギリは「みんなが必要なぶんだけとって!」と下の階に叫ぶ。しかし下の回のものは聞かない。ゴレンが「いうことを聞かないと料理にク○をするぞ!」と脅すと相手は言うことを聞いた。
ミハルが気を失った状態で降りてきた。ゴレンとイモギリは彼女を助ける。しかしミハルは夜にイモギリの犬を殺し、また下に降りて行った。
イモギリは絶望し、ミハルを面談したのは私。彼女は女優で、ここにはウクレレを持ち込んだ。夫もいないし子供もいない。ここには16歳以下は入れないので子供がいるはずはないと語る。ゴレンはミハルに関して何が真実かわからなくなり混乱する。
翌月、ゴレンが目覚めると202層にいた。イモギリが首を吊って自殺していた。トリマガシの幻影がイモギリの肉を食べろと言ってくる。イモギリの幻影は私の肉と血を食べて飲んだ者は永遠の命を得て最後の日に復活する…と聖書の一節を語った。
ゴレンはイモギリの体を食べずに耐えたが、ついにガラスの破片で肉を切り取って口にしてしまう。
翌月、目覚めると第6層だった。黒人のバハラトが同室だった。バハラトは持ってきたロープで上に上がろうとするが、上の階の女性にだ○糞されて落ちそうになり、ゴレンに助けられる。
ゴレンは穴のシステムをどうにか変えようと考える。テーブルは最下層まで行ったら上まで上がるから、料理を残してそれをメッセージとして伝えようとバハラトに話した。
豪勢な料理が降りてくると、2人はテーブルの上にたつ。テーブルが降りていく。2人はベッドの鉄パイプを振り回してその料理を守った。
バハラトが賢者と崇める男性が下の階におり、パンナコッタを残して上に送れ!と話す。
50階を過ぎるとゴレンとバハラトは飢えたものたちに料理を分け与えていった。
しかし料理のエレベーターは人が死んでいる階には止まらないことが判明。ゴレンは最下層は250階くらいだろうと考えていたが、まだ先があった。
ゴレンは下層階でミハルが男に殺されているのを見る。ゴレンとバハラトはその男たちを殺した。しかし2人とも大怪我を負う。
333層にたどり着く。なんと女の子がいた。料理はすべてなくなっていたがパンナコッタは残っていた。バハラトはパンナコッタをメッセージとして送ると言って抱えていたが、結局は女の子に食べさせた。
翌日、バハラトは男たちの戦いの腹部の傷がもとで死んでいた。
ゴレンは333階のさらに下へ。トリマガシの幻影が見える。伝言に運び手は必要ないと言うことで、少女をエレベーターに乗せた。
少女を乗せた料理台エレベーターは高速で上層階へ向かう。ゴレンは暗い穴の中でたたずむ。
映画『プラットフォーム』終わり
考察1:パンナコッタと髪の毛の意味
最上階にいるシェフが、髪の毛の入ったパンナコッタを見て激怒しているシーンがあった。
結論から書くと、髪の毛など料理の完璧さを気にするシェフと、食料がありさえすればいいと考える囚人の状況を対比させて、現実世界で富裕層が提案している貧困問題や環境問題がいかに上辺だけかを突きつけているのだと考える。
シェフが神だとしたら、神は間違っているかもしれない(劇中で何度も神を信じる信じないの話があったが)という表現だろう。
別の解釈として、シェフは神の真似事をしているだけとも考えられる。神は完璧な存在だが、それを真似するシェフ(富を分配する存在)は“料理のクオリティにこだわる(量でなく質にこだわる)”という間違いを犯していると表現しているとも考えられる。
シェフの上にも、もっと上位の存在がたくさんいるのかもしれない
そして主人公のゴレンと黒人のバハラトは料理が乗ったテーブルに乗り、パンナコッタを最下層まで守り抜いた。結局女の子に食べさせてしまうのだが、ゴレンたちはパンナコッタを残すことでシェフに「これを作ってたあなたの存在も完璧ではない」と伝え、穴のシステムを揺るがせたかったのだろう。
考察2:ミハルと子供の謎:女の子はどこから?
子供を探すために毎月下へ降りていくミハル。頭が狂気に苛まれていることはわかるが、実際に女の子がいたので頭が混乱した人も多いだろう。
まず、16歳以下が入れない“穴”に女の子がいた理由から考える。
VSC(垂直自主管理センター)に25年勤めたイモギリによると、ミハルを面談したときに子供はいなかったらしい。
とするとミハルは穴の中で出産した可能性もなくはないが、女の子は10歳くらいなので、出産したあとでミハルが10年穴の中で生き延びたというのは考えにくい。
(いくつも解釈は可能だが)結論をいうと、ミハルは若い頃に1度穴に入ってそこで出産し、穴から出てまた戻ってきたのだと思う。
イモギリによるとミハルは女優だったようだ。1度穴に入って認定書を手にして女優になれたが、産んだ娘が気がかりで別人のフリをして穴に戻ってきたのかもしれない。
またミハルも女の子もアジア系なので実の母娘?と考えてしまうが、血が繋がっていない可能性もある。
ミハルはプラットフォームの中で出会った女の子を自分の娘のような存在として守っていただけなのかもしれない。
いずれにせよ穴の中ではエレベーターに乗って下へは移動できるので、女の子がいる場所まで行って守っていた。しかし正式なペアではないので次の月にはガスで眠らされて別々になり、また探していたというのを繰り返していたのだろう。
最下層の333階の意味
女の子が最下層の333階で生き残れた理由は不明だが、キリスト教では三位一体など3という数字が完全を表すとして重要視されているので、333階は特別で、女の子は守られていたのかもしれない。
また全部で333階層あるということは、囚人の数は全部で666人となり、新約聖書のヨハネの黙示録に出てくる獣の数字=666と重なる。この数字の解釈は諸説あるが、666は人間を指している…的なことも書いてある。
この刑務所のような穴は人間=獣であることを証明しているのかもしれない。ただ、もし仮に333階層にはずっと女の子が1人しかいなかったとすれば、囚人の数は665となり、獣の数字として不完全になる。
女の子の存在が、人間を獣にしない唯一のものなのかもしれない。
結局何が言いたいのか
映画『プラットフォーム』が伝えたかったのは資本主義が作った社会階層の理不尽さ。
階層の内部にいる人間がシステムを改善するのは極めて難しい。それぞれが自分たちが生きていくので精一杯だからだ。
元職員のイモギリは、階層は200階くらいまでだからみんなが必要な量だけ取れば下の階の人は飢えずに済むと言った。
しかし333階まであることがわかり、実際は全員が必要な量を取っても飢える人は出るのである。これも現実世界を反映しているようで恐ろしい表現だ。
最後は少女をメッセージとして送り込む一縷の希望があったが、基本的には階層にしがみつく現代人は獣と同じであると突きつけていると感じた。