ベストセラー小説を映画化した『ザリガニの鳴くところ』のストーリーをネタバレありで徹底考察しています。
ラストの意味、ホタルが持つメッセージ、ザリガニが鳴くところはどこ?など深掘りしてみました。
ストーリーあらすじ結末や感想を知りたい人は下記記事へどうぞ!
映画『ザリガニの鳴くところ』は湿地で暮らす美しい女性がある男性の殺人容疑で起訴され、真相が暴かれていく物語! 全世界で1500万部突破し、アメリカでは2019年と2020年の2年連続で1番売れた本がついに映画化されました! […]
映画『ザリガニの鳴くところ』考察
ラスト結末の意味
カイアの死後、夫テイトが本に隠されたチェイスのペンダントを発見したことで、カイアがチェイスを殺していた事実が発覚します。
そして裁判の状況から察するに、カイアはチェイスを物見やぐらから突き落として、指紋をすべて拭き取ったのでしょう。
その日は出版社との食事会で他の街にいたというアリバイもあり、明らかに計画的な犯行です。
暴力を振るうチェイスに父を思い出し、生き抜くために残酷な決断をしたのでしょう。
ホタルの恐ろしいメッセージ
カイアは出版社のパーティーで、ホタルのメスが光るのは交尾のためだけでなく、他種のオスを捕食するためでもあると話していました。
カイアはホタルのメスの生態を自分に重ねていたのでしょう。
チェイス死亡事件について、カイアは無実の被害者だとみんなに思わせました。
ミルトンやジャンピンとメイベルの黒人夫妻はじめ、みんなが彼女の純真な光にまどわされていたわけです。
カイアから罪悪感がまったく見て取れなかったのが恐ろしいところ。
カイアは自然の生き物たちは善悪を超えていると言っていましたが、彼女もそういった哲学を持っており、チェイスを殺したことに罪の意識を感じていなかったのだと思います。
見終わったあと足を水につけたような不思議な冷たさは、美しいカイアと残忍な思想の対比があるからでしょう。
コンセプトとしては本当に素晴らしいと思います。
ザリガニの鳴くところの意味
幼い頃に父の暴力に耐えかねて出ていった母が「ザリガニが鳴くところまで逃げなさい」と言っていました。
カイアはこの母のアドバイスを胸に抱き続けています。
実際にザリガニが鳴く場所があったのではなく比喩なのでしょう(原作小説にはもっと具体的に書いてあるのかもしれませんが)。
ザリガニは水の底の暗い場所にいます。
泥がたまった沼地の底までは誰も追って来れません。
カイアが水の底に逃げられるわけではないですが、他人からは見えない深い場所を心の中に持てと言っているのだと思います。
そして、そもそもザリガニって鳴くのでしょうか?
私もザリガニを捕まえたことはありますが、鳴き声は聞いたことありません。爪とかがきしむ音でしょうか。
ザリガニの鳴き声自体もメタファーで、そんなものはないけど、それが聞こえるくらいの深淵(しんえん)を指しているのだと思います。
まとめると、存在しないザリガニの鳴き声が聞こえるような深い場所を心に持ち、そこに秘密を隠せという意味なのでしょう。
ザリガニは肉食。捕食者です。カイアはチェイス殺しの秘密をザリガニが鳴く深淵に隠し、充実した人生をおくったのです。
誰もその本性を知らない
本作ではノースカロライナの美しい湿地が印象的でした。
しかし湿地にはワニなど危険な生物がたくさんいます。映画冒頭でも湿地は死体について知り尽くしている的なモノローグがありました。
湿地は美しさだけでなく残酷さ・醜さをあわせ持っているのです。
湿地はカイア自身をあらわしており、誰もその本性を知りえないと伝えているのだと思いました。
湿地の奥底まで知り尽くしている人が存在しないように、美しいカイアの心の底までのぞける人もまたいないのです。
広い視点で考えればカイアのみならず、私たちの心の奥底には他人に絶対言えないような秘密や欲望が隠されています。そしてそれを一生表に出すことなく死んでいくのです。
家族であっても恋人であっても相手のすべてを知ることはできない。
そんな普遍的なメッセージが感じられました。