映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』(The Scarlet Bullet)のトリックやメッセージを徹底考察!
真空超伝導リニアシステムを使った狙撃や、MRIのクエンチ(電導体不安定)のテロなど、科学を使ったトリックは大人が見ても面白かったし、何より東京オリンピック中止を予言(ディス?)しているかのようなストーリーが興味深かった。
今年公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と同じくヒットしそうだ。
ストーリーあらすじネタバレ解説や「コナン君によるオリンピック中止のお知らせ」についての考察をしています。
ちなみに名探偵コナン公式サイトの問題の答えは宣教師。伝道師と電導をかけている。
ネタバレ考察!名探偵コナン 緋色の弾丸
オリンピックの中止を呼びかける社会派アニメに!
『名探偵コナン 緋色の弾丸』は、東京オリンピック中止のメッセージを叫んでいたのではないか!?
大袈裟じゃなく、本当にそう感じた。
まず、作中のWSGは間違いなくオリンピックのことだ。
その開会式前に拉致事件が起こる。
さらに当日には、無差別テロ事件と拉致、真空超伝導リニアの脱線、開会式場崩壊が起こった。
死人を出さずに事件が防がれたとはいえ、WSGの開催自体が危ぶまれるだろう。
オリンピックIOCのバッハ会長と同じポジションの、WSG会長アランが拉致されているのも面白い。これは五輪延期の責任を日本に押し付けようとしているバッハ会長へのディスりなのかw
現実に変換させると、バッハ会長が誘拐され、会場も当日に崩壊しました!というストーリーだ。日本政府や公安が想定する最悪のシナリオだろう。
そう考えると、「バーロー!東京オリンピックは中止だぜ!」のメッセージも多少ある気がする。
予言なのか、中止にしてほしいのかはわからないが、アニメ映画ながら社会風刺も取り入れていてタイムリーである。名探偵コナンがついに社会派アニメになった。
コロナのせいでストーリーが正当化される皮肉構造!
本作はコロナのせいで公開が1年延期になった。
しかし例えば、昨年コロナ騒ぎがなく『名探偵コナン 緋色の弾丸』が公開されていたら、オリンピックを危ぶむようなストーリーはちょっと物議を醸しそうな気がする。
テロが起こって開会式会場が崩壊する内容だからね…。世間体を気にするスポンサーが許さなそうだ。
しかし1年間公開が延期になり、コロナも2021年4月現在まったく終息していないこともあり「リニアが突っ込んで開会式場破壊される!」結末にもあまり違和感がない。
世論もオリンピック中止か延期派が多いので、文句を言う人は少なそうだ。
コロナ以前から東京オリンピックの開催に反対する人は多かったが、コロナで公開が延期され今年も中止になりそうなこともあって『緋色の弾丸』のストーリーがより受け入れられやすくなったことは確かだろう。
コナン緋色の弾丸には、本当に東京オリンピックを中止してほしいメッセージが込められたのか?
それともコロナによる中止を予言しているのか?
もしそうだとすれば、政治的な決断を下した社会的意義のある作品である。
映画『名探偵コナン緋色の弾丸』あらすじネタバレ解説
1:真空超伝導リニア発表式での拉致
4年に1度のスポーツの祭典WSG(ワールド・スポーツ・ゲームス)の東京開催が目前となり、新名古屋駅から芝浜駅に最高時速1000kmの真空超伝導リニアが開通することに。
園子の父・鈴木史郎社長のコネで、開通記念パーティに参加する江戸川コナンたち。そこで停電が起き、鈴木社長が何者かに連れ去られた。
元太が鼻をきかせたおかげで、鰻料理のカートがなくなっていることに気づいたコナンたちは厨房に運ばれていた鈴木社長を見つける。
先日拉致されて亡くなった鈴木社長の知り合いの三塚社長との共通点が、WSGのスポンサー企業になっている点だと気づくコナン。
元太たちは、鈴木社長を見つけたお礼として、園子からWSG開会式当日のリニア初運行搭乗券を貰って喜ぶ。
2:15年前の事件の模倣犯と見るFBI
FBIの赤井秀一たちは、15年前にアメリカで起きたWSG前の連続拉致事件と本件が類似しているとみて操作を進める。
15年前の事件とは、WSG開会直前に菓子メーカーの社長など3人が拉致され、逃げ出した一人が駅で射殺された事件だ。
日本人寿司職人・イシハラマコトが犯人とされ、冤罪を訴えたがその後獄中で死亡した。11年前には模倣犯も発生している。
赤井はコナンと電話で連携を取り合う。
コナンは、15年前と11年前当時ののFBI長官が、現WSG組織委員会会長アラン・マッケンジーだと気づいた。
3:リニア発車当日:病院でのテロとボイド誘拐
毛利小五郎は、自動車会社のCEOジョン・ボイドから「鈴木社長の居場所をポロッとバーで喋ってしまったのは私だから、次に狙われるかもしれない」と聞かされ、拉致事件の捜査に乗り出す。小五郎は蘭やコナンがリニアに乗ることを聞いて驚き、事件が起きるかもしれないから来るなと言う。
コナンは当日芝浜駅で開催される仮面ヤイバーのチケットをエサに、元太、歩美、光彦のリニア搭乗を諦めさせた。
蘭は新一がこの件を捜査すると聞いて当日新名古屋駅に到着。灰原とコナンもちゃっかり来ていた。
名古屋国際病院で健康診断を受ける搭乗者たち。しかしヘリウムガスが2Fで散布され、コナンたちは全員眠らされてしまう。
コナンたちは数分後目を覚ましただが、その隙にジョン・ボイドはさらわれていた。
灰原は、MRIのクエンチ(超電導導体の制御不能状態)で、冷却用の液体ヘリウムが漏れたことが原因だと突き止める。
コナンは彼にこっそりつけていた発信機の位置をスケボーで追う。赤井も連絡を聞いて追いかけた。
途中、赤井は実の妹である世良真純(彼女と母のメアリーはボイドの確保の任務に当たっていた)と鉢合わせ。赤井は変装していて真純はヘルメットだったため、素手で格闘することに。
そこへ追いついたコナンは、真純のバイクにのり、街中の階段上に置き去りにされているボイドを発見した。
4:リニアに乗り込むコナンと緋色の弾丸
病院でのテロを受けて、リニアは新名古屋から開会式場のある芝浜まで無人で走ることとなった。
しかしボイドだけでなく、病院からWSGの会長アラン・マッケンジーも連れさられていることが判明。コナンと真純はリニアにアランがいると考え、隙をついて乗り込む。
赤井はリニア発車直後に後方から特殊なライフル弾を発射した。
蘭たちは、リニア搭乗予定者全員で新幹線に乗り東京へ戻る途中だった。リニアのエンジニア・井上治がリニア内のモニターで見ると、コナンたちが映っている。蘭や小五郎はそれを見て驚いた。
コナンはアランを発見。FBIのジョディに協力を依頼し、リニア搭乗者名簿者の携帯を全員一気に鳴らしてもらう。
リニア内に潜んでいた、WSG関係者の白鳩舞子が出てくる。彼女の携帯だけ鳴っていない。コナンの予想通り、MRIでクエンチを起こしたときに電子機器である携帯が壊れていたのだ。
さらにコナンは「シラトリマイコ」は「イシハラマコト」のアナグラムだと見抜く。舞子はアランに銃を向け、「15年前の事件当日、私は父と一緒にいた」と怒りに震える。コナンは麻酔銃を撃つが、突如車体が減速し外した。
元狙撃選手だったアランは、「自分を撃つならリニアを破損させない位置から狙え」とその場所を指示。そのとき、リニア内にライフルの弾丸が飛び込み、舞子の肩を貫いた。リニアが減速したときに、赤井の撃った弾丸が車両を貫いたのだ。
5:もう一人の共犯者
コナンは、リニアを減速させた人物がいると考え、それが可能なエンジニアの井上治が共犯だと言う。井上は新幹線が止まった瞬間に逃亡し車で逃げ出す。
井上は、リニアを芝浜駅に突っ込ませるプログラムを起動した。
赤井とFBIが井上を追う。赤井は実弟で将棋の名人・羽田秀吉とその恋人・宮本由美と偶然出会って彼らを車に乗せる。
羽田の指示で、井上の車は追い詰められてクラッシュ。
ジョディに銃を向けられた井上は「15年前に米国で父親が拉致されスポンサーを降りたせいで父は会社を追われ悲惨だった。11年前に真犯人(実行犯)を見たと証言したがFBIは取り合ってくれなかった」と復讐の理由を話す。
ジョディは「その実行犯を調べた結果・犯人はイシハラマコトで間違いなく、実行犯とは司法取引をしたので、15年前に名前が出なかった」と話す。
井上は、FBIのミスではなかったことを聞いて絶望。
6:リニアがWSG会場に突っ込む衝撃結末!
リニアは止まらず、コナンは先頭車両でサッカーボール型の巨大エアバックを膨らませて減速させる。真澄が後部座席で世界国旗のパラシュートを開いた。
リニアは減速したものの、脱線してWSG開会式場に突っ込んでしまった。
シートベルトをしていたコナンたちはなんとか無事だった。
『名探偵コナン 緋色の弾丸』終わり。
ひどい皮肉!東京オリンピック開会式チームを排除された椎名林檎が主題歌
『名探偵コナン緋色の弾丸』で皮肉的だったのは、椎名林檎率いる東京事変が主題歌を担当する意味が、コロナによる1年の延期で全く変わってしまったこと。
椎名林檎は東京オリンピック開会式の企画チームに加わっていた。1年前の2020年に緋色の弾丸が公開されていたら違和感はなかったが、コロナで延期になり開会式チームが解散させられた後では皮肉な構造にみえる。
オリンピックディスをしたコナン君を、企画チームを解散させられた椎名林檎が恨み節で後押ししているような形なのだ。
主題歌「永遠の不在証明」は個人的にかなり好きな曲だった。歌詞はコナンに合うようにサスペンスチックになっているが、椎名林檎らしく、さまざまな解釈ができる難解な歌詞も魅力だ。
さあ隠し通せよ一層実は全部真っ黒だろうけど
嘘を吐く方選び台本書き続けるか釈明しようか©︎東京事変
恨み節目線で見ると、歌詞の上記の部分が企画チームの苦悩と捉えられなくもない。
追い越したい食い止めたい この手で急転直下
©︎東京事変
さらにサビの最後は、リニアが急転直下したオチの伏線になっている。
真実は不明だが、一つの解釈として、“恨み節”と読み解くのも興味深いだろう。
緋色の弾丸 評価まとめ/リニアやクエンチなど科学とサスペンスを両立した良作
『名探偵コナン 緋色の弾丸』を全体で考えると個人的な評価は83点くらい。
僕は科学に詳しくないので科学的にみてどうなのか?というのはわからないが、
- MRIのクエンチ(超電導導体の制御不能状態)で液体ヘリウムが気体になり、酸素濃度が薄くなってみんなが気絶してしまうトリック
- 真空超伝導リニアの線路(磁場が発生していて弾丸が浮く)に沿って特殊ライフル弾を撃ち、リニアを減速させて犯人の白鳩舞子を数分後に狙撃するシーン
など、科学をダイナミックにサスペンスに取り入れているのが感心した。
頭を使うので、大人が見ても間違いなく楽しめるだろう。
それでいて、15年前の事件の伏線と現在がしっかりシンクロしていた。本当にイシハラマコトが犯人だったという、やるせないサスペンスのカタルシスも得られた点も素晴らしかったと思う。
そして、もしもオリンピック中止のディスりメッセージも込められているのなら、社会派アニメという側面からより一層評価できるだろう。
欲をいえば、赤井秀一家族だけでなくいつものメンバーの活躍がもう少し見たかったが、しょうがない。
全体としてひどいところはなく、駄作でなく良作だ!
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