『ちひろさん』ネタバレ考察!ラストの意味と感想/風俗嬢の悟り評価,Netflix映画

  • 2024年3月1日

Netflix実写映画『ちひろさん』有村架純が元風俗嬢のお弁当売りになり、孤独を抱える人たちをつなげていくハートフルなヒューマンドラマ

シネマグ
心がお弁当のようにほっかほかになる!かと思えば登場人物の葛藤や切なさに打ちひしがれる感動作!

作品情報・キャスト

ネタバレなしの感想

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

登場人物との関係やストーリー解説

切なすぎるラスト結末の意味を考察

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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Netflix映画『ちひろさん』作品情報・予告・キャスト

公開:2023/02/23
上映時間:2時間11分
英題:『Call Me Chihiro』
ジャンル:ヒューマンドラマ
年齢制限:13+(やや性的なシーンあり)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織/今泉力哉
原作:安田弘之のコミック「ちひろさん」モーニングKC
キャスト
ちひろさん|有村架純
オカジ(瀬尾久仁子)|豊嶋花
まこと少年|嶋田鉄太
店長(内海)|リリー・フランキー(『コットンテール』)
多恵さん|風吹ジュン
バジル姐さん|van
ホームレスの師匠|鈴木慶一
べっちん(宇部千夏)|長澤樹
ヒトミ|佐久間由衣
谷口|若葉竜也
チヒロ|市川実和子
尾藤さん|平田満
永井さん|根岸季衣

原作者の安田弘之さんはドラマ化もされた『ショムニ』などで有名です。

有村架純

Netflix映画『ちひろさん』の有村架純

©︎Netflix

有村架純さんが実写版の主人公・ちひろを演じます。

透明感がありすぎるので、元風俗嬢という役柄はどうなんだろうと思ってましたが、声のトーンも低めにして妖艶さも出し、役に完全にハマっていたと思います。

明るくてサバサバしていて魅力的だけど、心に孤独も抱えている。そんな深いキャラクターは有村架純さんだからこそ。

最近は映画『月の満ち欠け』の演技も印象的でした。

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Netflix『ちひろさん』あらすじ

お弁当屋・のこのこでは、最近入ってきた元風俗嬢のちひろさんがいろんなお客と楽しそうにしゃべっている。

みんな元風俗嬢だということは知っており、ちひろさんは過去がバレていることを気にしていないようだ。

猫としゃべり、公園で小学生と遊ぶ魅力的なちひろを見た女子高生のオカジは、かげから彼女を観察する。

元風俗嬢ちひろを軸に、さまざまな人間関係が交差していくのだった。

ネタバレなし感想・海外評価

元風俗嬢のちひろさんが、さまざまな人物同士をつなげていくハートフルなヒューマンドラマ

登場人物それぞれの悩みが、ちひろさんがつなげた人間関係によって解消されていく過程に心を揺さぶられます。

ストーリーの起伏がないので刺激を求める人には向かないですが、日常に疲れて心をほっこりさせたい人にはおすすめです。

心があたたまるだけでなく、過去のトラウマとの向き合い方、親子関係など家族との向き合い方など、学べることも多い作品です。

ぜひNetflixで視聴してみてください。

おすすめ度 80%
ハートフル度 87%
ストーリー 75%
IMDb(海外レビューサイト) 6.8(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 50%
一般の視聴者 80%

※以下、Netflix映画『ちひろさん』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ちひろさん』ネタバレ感想・評価

Netflixオリジナル映画『ちひろさん』の評価は80点。

心あたたまるヒューマンドラマの佳作。ちひろさんが姿を消してしまうむなしさと切なさが入り混じるラストがすごく好きでした。

心情を吐露するセリフは少なめに、叙情的な風景で登場人物の微妙な心理を切り取っています。

登場人物の細かい動きが心情吐露の代わりです。

全部セリフで説明しちゃうコンテンツが主流の昨今にあって、映像そのものによって意味がつむがれていく本質を突いたつくりだと思いました。

ちひろさんの生き方からは、無為自然やさとりの境地のようなものも学べて、現代社会に生きるわれわれに強烈なクエスチョンを投げかけています。

シネマグ
生き方を問い直してくれるという意味でもすばらしい映画だと思いました。

ただ、難点を言えばストーリーに起伏がないのが少し残念。(まあ原作からしてそういう話なのでしょうがないですが)

全体的にサスペンス要素のない『万引き家族』みたいな雰囲気にとどまっていた感がありました。

ちひろ以外のみんなには家族のような絆が生まれるものの、ちひろさん自体は他の土地へ消えてしまう。このラストも是枝監督の『ベイビーブローカー』と似てます。

元風俗嬢の弁当売り子というキャラ自体はオリジナリティがあるのですが、広い視点で見たときのコンセプトにやや斬新さが欠けていたようにも思えます。

(今泉力哉監督も是枝監督もドラマ『有村架純の撮休』に参加してますし、何かしら交流はあるのかもしれません。)

以降はちひろさんと魅力的な登場人物の関係を軸に、ネタバレありでストーリーを解説していきます。

ちひろさんとホームレスの師匠

ちひろさんは師匠と呼ばれるホームレスにあまったお弁当をあげたり、家に招いて体を洗ってあげたりします。

シネマグ
自分と同じように孤独な人物に共感を持ったのでしょう。いわば孤独の師匠です。

元風俗嬢の自分とホームレスが社会的には底辺だから共感したという差別的で安っぽいものではなく、見た目や肩書きで人を判断しないちひろさんの崇高さが垣間見える関係です。

しかしちひろさんはホームレスの師匠が廃墟の庭で死んでいるのを発見します。師匠の死因は明示されてませんが、外傷はなかったようなので、何かしら持病があったのでしょう。

ちひろさんは師匠の死体を自分で埋めます。

死体遺棄になってしまうので犯罪ですが、世の中の枠組みからはみ出しているホームレス師匠を、同じく世の中からはみ出している自分の手で供養したかったのでしょう。

オカジとまこと

オカジとちひろさん

©︎Netflix

ちひろさんに憧れる女子高生・オカジ。

こっそりちひろの隠し撮りをしていることがバレたオカジは、海で足だけつかっているちひろさんと一緒に自分も裸足になって海に入ります。

感想を語る犬
裸の付き合いならぬ裸足の付き合いです。

家に帰ったオカジはまだ自分の足をながめています。ちひろさんと一緒に海につかって心が解放されたことの現れです。

オカジの家はわりと裕福なのですが、実態は母が父の言いなりになっている非常に窮屈な家庭。

オカジはいい子を演じなければいけない家庭に精神的な抑圧を感じ、ちひろさんに心の解放を求めました。

もう1人出てくるのが小学生のまこと。彼の母は水商売をやっているのか、夜は家にいないようです。

ちひろさんはオカジにまことの勉強を見させます。

ちひろとオカジとまこと。家族でもない奇妙な組み合わせですが、万引き家族のように一緒にいることでお互いが救われているのです。

ちひろのまえにまことの母・ヒトミがあらわれ、「まことが自分に花束を渡したのはお前の入れ知恵だろ!」と怒鳴ります。

ちひろは「花束を受け取らなければ一生後悔する」と言い返しました。

子供を理解しないヒトミに、幼い頃に育児放棄した自分の母親を重ねたのでしょう。

店長・内海との関係

ちひろさんは親友でショーガールのバジル姐さんと祭りに出かけ、風俗嬢をやっていたときの店長・内海(リリー・フランキー)と再会します。

店長は風俗経営をやめ、今は熱帯魚屋を営んでいます。

ちひろは店長に頼んで最近死んだ自分の母の墓参りに連れていってもらい、「店長はお父さんのような存在だ」と言いました。

店長はちひろが風俗嬢として働きたいとやってきた日に、ちひろの靴がボロボロだったことを思い出し、雇わなければ死んでいたかもしれないと回想。

男と女には恋愛関係しかないという固定観念を取り払うとともに、風俗という仕事がだれかの命を救うことにもつながるという、倫理観を超えた人と人とのつながりを表現していたと思いました。

ちひろさんとチヒロ

ちひろさんの本名は綾ですが、幼い頃にあったチヒロという水商売の女性への憧れで源氏名をちひろにした経緯があります。

チヒロは、幼いちひろがつくった出来損ないの巻き寿司を美味しいと言って食べてくれました。

チヒロはちひろが手を握りたそうにしているのに気づいて、ガシッと握り返します

感想を語る犬
本作の中で1番の名シーンで目頭が熱くなりました。

育児放棄された幼いちひろの心は、水商売の女性・チヒロによって間違いなく救われたのです。

ちひろと多恵さん

ちひろはお弁当屋・のこのこに勤めるまえ、雨の日に弁当を買いに行き、元風俗嬢だと言っても動じない多恵さんに心惹かれてこの店で働くことを決めました。

ちひろがはたらき始めるまえに多恵さんは階段から落ちて入院して視力を失ってしまい、一緒に働くことはありませんでした。

ちひろは綾と名乗って多恵の病室へ何度もおもむき、彼女の話し相手になっていました。

おそらく多恵は最初から、雨の日にお弁当屋に来た新しいバイトの子・ちひろだと気づいていたのでしょう。

多恵と幼い頃に会ったチヒロが、ちひろさんが同じ星の生まれだと感じている2人です。

映画『ちひろさん』切ないラストの意味を考察(結末ネタバレ)

ちひろがつなぎ合わせた、オカジ、まこと、べっちん、多恵、店長、バジルが屋上で楽しそうに食事会を開いて盛り上がっています。

輪になったイスに座って楽しくおしゃべりするメンバーがひとりひとり順番に映されていったかと思うと、ちひろのイスだけ空いています。

シネマグ
切なさが爆発する最高の演出です!

ちひろはその場から去りました。

多恵はちひろが去ったことに気づき、「あなたならどこにいても孤独を手放さずにいられる」と電話します。胸に突き刺さる深い言葉ですね。

多恵はちひろの心の空洞に気づいていたのです。

結局、ちひろは弁当屋もやめて街から去ってしまい、どこかの牧場で牛の世話をしているところがラストシーン。

なぜちひろさんはみんなの前から姿を消したのでしょうか?

おそらく、だれかを幸せにすることでしか自分の存在意義を見いだせないからでしょう。

だれかの幸せのなかにちひろさん自身は入っておらず、オカジやまこと、多恵たちをつなげて自分の役割は終わったと感じてしまったのです。

母親に育児放棄された過去、愛する人に背中を刺された過去などがあり、だれかと一緒に幸せを感じることを肯定できていないのかもしれません。

肯定してしまえば、これまで必死につみあげてきた自分の生き方が崩れ去るからです。

みんなともっと仲良くなり、自身のトラウマが克服されれば、もう以前のちひろさんではなくなります。結果、せっかく結ばれたみんなの絆も、ちひろさん自身の変化によって破壊されるかもしれません

それよりは、自分1人が去ることを選択したのでしょう。

ただ牧場で精一杯働くちひろさんを見ていると、いつか相手の幸せが自分の幸せにつながることを肯定できる日が来るのだと思います。

最後のまとめ

Netflixオリジナルの映画『ちひろさん』は、元風俗嬢のお弁当屋売りを軸に魅力的な登場人物が交わっていくハートフルなヒューマンドラマでした。

シネマグ
登場キャラの些細な行動が、大きな心の動きを表現しているコンセプトがすばらしいです。

ストーリーに起伏がないのは少し残念だったですが、そういう作品なので仕方ないですね。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『ちひろさん』レビュー終わり!

Netflixオリジナル作品のレビュー

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