映画『12人の怒れる男』ネタバレ感想・考察「陪審員の討論や問題点」名作を徹底解説

  • 2024年4月11日

名作映画『12人の怒れる男』!誰もがタイトルくらいは知っているのではないか?

この映画に影響され、作られた法廷モノは数知れず。画期的な名作である。

個人的な感想は、映画としては面白いが、ラスト結末に納得いかないというもの。

陪審員8番の議論でひっくり返される正義の逆転劇!とも見えるし、陪審員制度の穴を露呈していた点も考えなくてはいけないと思う。

その辺を重点的に解説していく。

映画『12人の怒れる男』ネタバレ解説!無罪の理由は何一つ無い,証言の嘘を追求

『12人の怒れる男』について、まず、少年が有罪である証拠を考えてみよう。

ちなみに、少年は、父親をナイフで刺して、戻ってきたところを捕まっている。

  1. 少年は珍しいナイフを買い、それが凶器
  2. 下の階の老人が下で叫び声をあげ、出ていくのを目撃
  3. 向かいの女性が少年が父親を刺すのをみていた

主な証拠はこの3つ。

他にも、少年は父親から暴力を受けていた凶器と同じ型のナイフを友達に見せていた犯行時刻は映画に行ったと供述しているが、映画の内容を覚えていないなどの、状況証拠もいくつかある。

その3つに対して、陪審員8番がどう反論したか、冷静に考えてみよう。

少年は珍しいナイフを買い、それが凶器

これに対しては、犯行現場で似たナイフを買い、凶器が珍しくないものだと証明。少年がナイフを落としたと言っているのは本当かもしれず、他の人が犯行に及んだ可能性も捨てきれないと示唆。

下の階の老人が下で叫び声をあげ、出ていくのを目撃

法廷で老人が脚を引きずっていたので、犯行時の叫び声を聞いて、ドアに行って、階段を降りる少年を見たというのが疑わしい。そもそも線路沿いで列車が走っていたので、叫び声は聞こえないはずだと反論。

向かいの女性が少年が父親を刺すのをみていた

女性が法廷でメガネの跡があったことから視力が悪いと判断、夜、向かいの殺人をしっかり確認できたか疑わしいと反論。

女性の視力の程度については、全く確証がない。

『十二人の怒れる男』の結論

3つの証拠と、それに対する陪審員8番の反論について、一通りみてもらった。

結局、主人公の陪審員8番は、目撃者の女性と、証言者の老人の供述について、正確ではないという可能性を示しただけである。

「推定無罪の原則があるのだからそれでイイじゃないか!」と考える人も多いだろう。

しかし、冷静に考えてみると、証言者の供述の本筋はあっていて細かい部分が不正確なだけの可能性が一番高いのではないか。

加えて少年が無罪であるという根拠は一切出てこない

これを個人的に考えると、再度証言をしっかり確認して、再度協議する必要があるのではないか?

陪審員制度の場合、無罪が出てしまうと、覆せないらしいが・・・

映画『12人の怒れる男』ネタバレ感想/正義か?陪審員制度の欠点か?

アメリカの陪審員制度については、犯罪や法律に詳しくない一般市民が行うのは、そもそも間違っていないか?という根本的な問題が、成立時から指摘されている。

前提として『12人の怒れる男』は“推定無罪を正義の心と鋭い推察で貫いた”すばらしい映画であることは間違い無いだろう。

ただ今作のケースでは指紋や犯行現場とり押さえなど、確実性の高い証拠がないので、陪審員制度ではヒロイズムの裏側に、議論上手な理想主義者の思い通りに決断が出てしまう怖さと表裏一体であると個人的に感じた。

疑わしきは罰せずという刑事裁判の原則を武器に、証拠を判断材料から切り捨ててしまう危うさもあるのだ。

陪審員制度は一般人同士の議論なので、検事を相手にするより、他の証拠の切り捨てが容易にできてしまう!というのは、非常に大きな問題だろう。

もちろん、それで冤罪だった人が救われる可能性もあるわけで、疑わしきは罰せずという原則が間違いだとも言えないが、いっぽうでO・J・シンプソン事件のような、世界が驚愕するような無罪判決も生まれてしまう。

『12人の怒れる男』は、論理的な議論により、陪審員制度の問題点を浮き彫りにしてくれた。

シナリオ自体も見事だが、そういう疑問を抱かせてくれるという意味でも、非常に価値が高い作品だと感じた。