韓国映画『ワンダーランド:あなたに逢いたくて』
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
考察:最後の会話の意味、死者と会話できる世界は幸福か?
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
韓国映画『ワンダーランド:あなたに逢いたくて』作品情報・予告
制作国:韓国
上映時間:115分
原題:『원더랜드』英題『Wonderland』
ジャンル:SF・ヒューマンドラマ
年齢制限:10歳以上
監督・脚本:キム・テヨン
※以下、韓国映画『ワンダーランド:あなたに逢いたくて』のストーリーネタバレありなので注意してください!
母と娘の物語
韓国に住む中国人のバイ・リー(タン・ウェイ)は若くして病気で娘のジアを残して死亡。生前に母と相談しており、死後もワンダーランドサービスで仮想空間から娘のジアと会話する。
リーはデータ上の存在でしかないのだが、生きている実感があるようだ。しかし自分では死んでいることはわからず、考古学者として世界で仕事をしているため、娘とは今会えないという設定を信じている。
リーは中東で発掘をしながら娘に電話する。7歳の娘は母が死んでいることを知らない。
リーは空港でソンジュン(コン・ユ)という男性と知り合った。ソンジュンはその後もなぜか中東に来ていた。
リーの母は、データ上のリーは本人ではなく、孫が毎日会話するのは不健全だと思い、サービスを停止を決断。田舎に帰ろうと空港へ行くが、そこでジアがいなくなってしまう。
母から電話を受けたリーは、ソンジュンの助けを借りてワンダーランドのシステムから抜け出す。実はソンジュンはワンダーランドの職員だったが、リーを毎日見ているうちに彼女のことが大切な存在になっていったのだ。
リーは仮想空間上の空港から娘のジアにテレビ電話。位置はすぐ近くのはずだが、仮想空間にいるリーの姿は娘のジアからは見えない。
自分が死んでいると悟ったリーはジアに「ママは死んだけど、毎日寝る前に本を読んであげる」と約束した。そして母に、「今までありがとう。来世ではあなたの母になる」と言った。
リーのデータは消えなかったようで仮想空間で生き続けている。リーはまたソンジュンと会う。しかし以前とは違い、自分が置かれている状況に気づいているようだった。※リーとソンジュンの最後の会話と関係性については考察の項目で詳しく解説。
恋人の物語
キャビンアテンダントのジョンイン(ペ・スジ)。その恋人・テジュ(パク・ボゴム)は、昏睡状態で病院のベッドから目覚めない。
ジョンインはワンダーランドに頼んで彼のデータを作ってもらい、会話する奇妙な日常を送っていた。テジュは宇宙飛行士で宇宙にいる設定だ。
そんなある日、寝たきりだったテジュが奇跡的に目覚める。ジョンインは喜ぶが、テジュは長い時間寝ていたことで認知に問題がある状態だった。
ジョンインはテジュと一緒に暮らすが、明るかった以前の彼と行動や性格が違って戸惑い、ワンダーランドのテジュとこっそり会話をするようになる。
テジュはジョンインが仮想空間の自分と話していると知ってショックを受けた。
テジュはジョンインがスペインにフライトするというので一緒に乗って向こうで話し合おうとするが、直前で降りる。
テジュは空港で、リーという女性からの電話を受ける。空港内でいなくなった娘を探してほしいらしい。テジュは空港外で車に轢かれそうなジアを見つけて助け、リーの母に引き渡した。
数日後、ジョンインとテジュは公園で別れるが、ジョンインはテジュを追いかけて抱きしめた。
父との物語
ワンダーランドのスタッフ・ヒョンス(チェ・ウシク)は、病気で余命わずかながらも明るい男性・ヨンシクから、「死後はワンダーランドサービスに登録してほしい」と依頼を受ける。
ヒョンスはヨンシクの写真を調べていると、若い頃の自分の母と一緒に映っている写真があった。ヒョンスは母・ギルスンから、あなたが小さい頃に父が出ていったと聞かされていたため、こんな形で再会するとは…と驚いた。ヨンシクは気づいていない。
やがてヨンシクが死亡する。彼は映像になって自分の葬式に参加した(データになったヨンシクが死を自覚しているとバグるため、葬式に参加した記憶は後で消す)。
ヨンシクはハワイに旅行に行っている設定で、仮想空間で楽しく暮らしていた。ヒョンスは彼に電話し、一緒にゲームをやるなど交流を深める。
ヒョンスと同僚のヘリは、仮想空間のAI孫・ジング(タン・ジュンサン演)がグレて、生きている祖母にモノをねだりまくっていると知って複雑な気持ちになった(データ上でAIにプレゼントを送れるシステムがある)。祖母は仮想空間でプレゼントを送るためにダブルワークをして体を壊して死亡。ジングのデータも消されることになった。
ヨンシクは母・ギルスンと会ったときにヨンシクに電話する。2人はお互い過去に家族だったと気づく。ギルスンが「あのとき出ていってごめん」と謝った。ヒョンスは出て行ったのが母のほうだと知って驚いた。ヨンシクは気にするな。また会おうと言った。
ヨンシクは会話からヒョンスが息子だと気づくはずだし、奇妙な家族関係が始まりそうな趣深いエンドロール。
考察:最後の会話の意味
ハリウッドでこの手の映画が作られると、ほとんど、「AI(人工知能)との会話は健全でない、悲劇だ!滑稽だ!戦争だ!」みたいな結論にいたることが多い。AIの彼女を作る物語、ホアキン・フェニックスの『Her』も悲喜劇として描かれていた。
いっぽうで『ワンダーランド』はいろいろ考えるべきところはありながらも、デジタルの世界から娘を救ったリー(タン・ウェイ)や、父の死後に親子関係を始められそうなヒョンス(チェ・ウシク)など、AIとの関係に光が当たっていたのも興味深い。
体が消滅してデジタル化しているので、本人なのかどうかは微妙なライン。しかし生きている者を元気づけてくれることも確か。
リーは実際に、空港にいるテジュに電話で助けを求め、娘の命を救った。まぎれもなく現実に影響を与えうる存在だ。
ただ、いつまでも死なないというのは、救いでもあり、恐怖でもある。
死は、生きとし生けるものの特権である。死がデジタルで曲がりながらも克服されてしまったら、生きる意味もわからなくなってしまうかもしれない。その点はやはり怖い。
また本作は、デジタルのリー(タン・ウェイ)を現実のソンジュン(コン・ユ)が大切な存在と感じている描写があり、仮想空間と現実との壁が美しく融解しているのもポイント。
リーとの会話で、ソンジュンには親がいないと判明。2人が最後に空港で会ったときにソンジュン「長旅ですか?」リー「あなたと同じ」という会話があるが、これはソンジュンが現実で埋められない心の穴のようなものを、仮想空間でリーとあって埋めようとしている意味だろう。
ソンジュンはリーに女性として惹かれていた印象もありそれも間違いではないと思うが、同時にリーとジアの関係を見て、親子とは何かを長い時間かけて学んでもいる。
ソンジュンが親子の愛を理解するのには時間がかかる。リーはそこまで悟って、ソンジュンに「あなたと同じ(長旅)」と答えたのだろう。(リーも仮想空間の中で自分の存在を長い時間かけて問いかけ続けることになる)
リーのデータはサービスが終了しても消えなかった。リーは死んでいることを自覚しつつ、仮想空間の中を生き続け、娘の成長を見守り続けるのだろう。
ヒョンスも実の父・ヨンシクの死後に、AIデータとなった彼と父と息子の関係を初めていくようだ。エンドロールで提示されたのは、死後に始まる親子関係。斬新で深い。
また、ジョンインがテジュに後ろから抱きついた直後に仮想空間のテジュが宇宙から地球へ落下したシーンが挟まれていたので、仮想空間のテジュの想いが本物のテジュの中へと入ったのでは?と思わされる。
ここまで来ると仮想空間のデータは単なるデータでなく、その人の霊魂といっても過言ではない。ワンダーランドがひとつの天国に見えてくる。あとは人類がそれを許容するかしないかだ。これが正しいかどうかは現時点で判断はできない。価値観や文化、宗教的な側面からそれぞれがどう判断するかに委ねられるだろう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix韓国映画『ワンダーランド:あなたに逢いたくて』レビュー終わり!
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