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Smells Like Maniac 第2話 ホワイトブロウ その3〜テキサス ホールデム〜
〜シャーリー編〜
テキサス ホールデム(ポーカー)がはじまった。間接照明が肌を薄黄色に照らす。壁には エッシャーの「滝」や、 マグリットの「恋人たち」の絵が掛かっている。
バーテンのカード捌きは中々のものだ。バーテンよりもこちらが本業なのかもしれない。
このゲームの最中以上に人間観察が楽しめる瞬間はないだろう。ポーカーに勝つのも勿論楽しいが、その人について深く知ることができるのが、このゲームだ。その人物から、目の前で淹れたコーヒーの味を褒められるときと同じか、それ以上のことが分かる。コーヒーに関していえば、同じ味でも人によってどこに着目しているかが全く違う。そこに性格や感性を知ることができる。
全身タトゥーのいかつい男性が、コーヒーについて思いもしなかった繊細な感想を投げかけてくれた時、その人を深く知れた気になるし、世の中捨てたもんじゃないと感じられる唯一の幸せな瞬間だった。ポーカーはいうなれば、そんな意外な瞬間の連続だ。賭けを繰り返していると、本人すら気づいていないような深い感情が見えることがある。
左隣のクリスは、ポーカーフェイスこそ上手いものの、最後のベットでロバートに勝てない展開が続く。賭け事にはあまり慣れていないようだ。頭の中では焦っているのだろうか。想像してみると少しかわいく思えた。
食事の最中は隣でずっと喋ってジェームズは、ゲームの最中はほとんど口を開かない。負けるのが大嫌いな人の特徴だ。
ロバートは冗談を言いながら、時々相手が怒りそうなことまでさらっと口に出す。冷静さを失わせ、それがゲームにどう影響を与えるか観察しながら楽しんでいるようだった。彼も人間を見るのが好きなのかもしれない。
オーナーのカルロは負け出すとあからさまに顔が険しくなってきた。ゲームには慣れているはずだが、ポーカーはそこまで強くはないようだ。
飲んでみんなで喋りながら、ゆっくりとゲームは進んでいく。
たった1〜2時間ポーカーをするだけで、10年来の親友についてよりもここにいるメンバーのことを深く知れた気がする。そして、全く気を使わなくても大丈夫な不思議なメンバーだった。他人の目線を気にしているような人物は一人もいない。煙にまみれたこの空間は何とも心地よかった。
時計の針は2時を回っている。今夜はロバートに軍配があがった。
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