『室井慎次 敗れざる者』ネタバレ考察,杏が来た理由,日向真奈美の秘密, 生き続ける者への伏線

  • 2024年10月11日

『室井慎次 敗れざる者』ネタバレ・ラスト結末の解説

現場が捜査をしやすいように警察組織を改革する…そんな青島との約束を果たせずに警察を辞職して地元の秋田に引っ越した室井慎次(柳葉敏郎)は、母が殺された高校生・森貴仁(演-齋藤潤)と、父親が強盗で服役中の小学生・柳町凜久(演-前山くうが&前山こうが)を里子に迎えて一緒に暮らしていた。

しかしある日、家の前に広がる湖の向かい側で死後2週間の死体が発見される。身元は20年前のレインボーブリッジを封鎖できなかった事件で、容疑者として捕まった瀬川だった。彼は18年間刑務所に収監されていたが、2年前に出所してまた特殊詐欺や強盗を働いていたようだった。死体と一緒に腐った洋梨が発見される(映画版2作目の“用は無し“のメッセージと一緒)。

そんな中、日向杏(福本莉子)という女の子が家の近くにある離れで衰弱しているのを発見。室井や凜久が彼女を看病する。杏はすぐに元気になった。杏は室井宛の手紙を持っていた。差出人は杏の里親で、杏を引き取ったが彼女が非行を繰り返したため室井に押し付ける内容だった。室井は警察に届けるが、居場所が確保されるまでは杏はこの家に住むことになった。

室井は杏の容姿や息子たちに取り入る巧妙さから、身元を確認してみる。杏の母親は12年前に脱獄してまた青島に捕まった凶悪殺人犯・日向真奈美(小泉今日子|映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間』に登場した猟奇殺人犯・日向真奈美)だった。

真奈美は14年前に獄中出産したという(時系列では真奈美が再登場した踊るの映画シリーズ第3作の前に出産していた)。相手の男性は不明らしい。

杏は表面上はいい子だったが室井に恨みがあるようで、貴仁や凛久に「室井が里親になったのは金をもらうためで、金が貯まったらあんたたちを捨てる」とか「室井に殴られた」と嘘をついた。貴仁たちは驚いたものの、室井がそんなことするはずないと思い直す。室井は杏に「人に迷惑をかけるな」と言った。

そんなある日、新米弁護士の奈良育美(演-生駒里奈)が貴仁を訪ねてくる。彼女は貴仁の母親(佐々木希)を暴行して殺した犯人の弁護士だ。奈良は「被告からたくさんの謝罪の手紙を送ったけど読んでくれた?」と話す。貴仁は首を横にふった。謝罪の気持ちを受け入れ、法廷で証言してほしいらしい。

貴仁は自分の気持ちに踏ん切りをつけるために室井と一緒に拘置所に面会に行く。奈良が立ち会いたいというが室井が断った。刑務官はかつて湾岸署の立番をしていて、室井がきりたんぽ鍋を食べうよと話した同じ秋田出身の森下孝治(演-遠山俊也)だった。

貴仁は犯人の悪びれない態度を見て、「母さんはあんたみたいなヤクザ者と付き合っていた。彼はどうしようもない男で、酒を飲むと情けねえと泣いていた。おまえもそうだろ!」と言ってのける。犯人は何も言い返せなかった。

面会は終わった。室井は貴仁の肩を叩こうとするがやめた。その後、犯人は殺人を自白したという。奈良も貴仁を利用しようとしたことを謝罪してきた。

室井はかつて意見対立した新城賢太郎(演-筧利夫)に呼び出される。新城は秋田県警の本部長になっていた。室井に特殊詐欺の犯人の1人が埋まっていた事件について捜査に協力してほしいという。室井は新城を家に呼んで一緒に酒を飲んだ。

次の日室井は警察に呼び出される。警視庁捜査一課の桜章太郎(演-松下洸平)は室井に会えて興奮した様子で、事件について意見を求めてくる。

家に帰ると貴仁は室井に、ずっとここにいていい?と言う。室井はうなづいた。室井は離れにいる凛久を迎えにいく。凛久は室井はあったかいから好きだと言う。

家の隣の小屋が音を立てて燃えている。杏がその前に立っている。室井は消化器で突っ込むが、火は消えない。かつて管理官だった時に来ていた服が燃えていった。室井の心も燃える。

考察1:杏の目的は何か?

続編の『室井慎次 生き続ける者』の予告で、杏は母親の日向真奈美に会っていたことがわかる。真奈美には洗脳能力があるので、杏は何らか洗脳されて室井のもとにやってきたのだろう。

そしてレインボーブリッジを封鎖せよの犯人グループの1人瀬川吉雄が室井の家の湖の向こう側に埋められていた事件と無関係ではないだろう。おそらく日向真奈美が裏で何らかの意図を引いている。

真奈美は自分を警察署内で殺してくれという願いを2度も打ち砕いた青島への復讐として、青島が信じていた室井慎次に瀬川殺人の罪を着せるつもりかもしれない。杏はそのための裏工作を働いているのではないか。

杏が犬の名前をしんぺいと呼んだとき、室井は怪しんだ。もしかしたら犬の名前を教えていなかったのかもしれない。杏は家の離れに潜伏しながら、室井についていろいろ調べていたことになる。

小屋や室井の服を燃やしたのも杏っぽいが、真相はまだ不明。凛久に火傷があり、凛久の父親の左手にも火傷のあとがあるとすると、凛久が何らかのトラウマで燃やしてしまった可能性もあるし、出所した彼の父親が室井と息子を引き離すためにやった可能性もある。

また杏は、人に迷惑をかけるなと室井に言われてすごい形相になっていた。おそらく、里親からその言葉を口すっぱく言われてトラウマになっているのだろう。

考察2:杏の父親は誰か?

杏の父親はカウンセラーか警察関係者で、娘・杏の獄中出産はモミ消されたとのこと。映画の3作『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』の主犯・須川圭一(森廉)は日向真奈美と外で接触する機会があったので、杏の父親は圭一かもしれない。

ただ室井が引退してから警察組織を改革する大逆転が『生き続ける者』であるとすると、真奈美が警察の重役、長官補佐の坂村正之(演-升毅)などと関係があった…などもありそうな気がする。もしくは父親は圭一だけど獄中出産の隠蔽が明らかになり、室井がそれを世間に向けて暴くなどの展開がありそうだ。

考察3:生き続ける者の内容

『敗れざる者』の内容から察するに、生き続ける者のテーマは、親とは何か?というものになるだろう。

室井は貴仁や凛久の実の親ではないが、信頼関係を築いている。いっぽうで、凛久の父は出所して凛久を連れ去ろうとする。凛久の左肩にはやけどのあとがあり、父親から虐待を受けていたことがわかる。

そして杏についても日向真奈美に利用されているとすれば、親子の絆は血の繋がりだけではないというテーマが主軸になるだろう。

そして凛久が組織の説明をする新庄に対し、組織って家族のようなものでは?と無邪気に語ったように、警察の組織内での信頼関係にも血のつながりより濃いものがあると示唆されるのではないか。