映画『まる』ネタバレ・ラスト結末まで解説
フランスの画廊に認められ、沢田のまるの絵画は国内の大きな美術館で飾られる。沢田はそのまるについていた蟻を取ろうとするがスタッフに止められた。僕が沢田ですというとみんなが騒ぎ出す。
沢田の個展が開かれる。矢島が仲間たちと乗り込んできて、金のために絵を描くな!搾取をするなと言って作品に絵の具を塗りたくる。
隣人の横山は売れない漫画家だった。沢田が自分が知らないところでまるを描くだけで売れ始めていると知って急に怒り出し、勝手に沢田を名乗ってまるの絵を描き始めた。
沢田は自分が描きたかった絵を描いてみるが、アートキュレーターの土屋は首を縦に振らない。沢田は左手でまるを描いて、右手でパンチをして絵に穴を開けて去っていく。
そのご、田舎に引っ越した沢田は交通整理をしている先生に会う。先生は底辺かける高さわる2と叫んでいた。
沢田は空を飛ぶ鳥の群れを見つける。
映画『まる』考察1:蟻の意味=未来の選択肢
重要なモチーフになっていた蟻は沢田自身を表しており、沢田の未来の選択肢になっていると感じた。
3つの蟻が出てきた。
- 沢田のまるの絵の具で固まって死んだ蟻
- 沢田が助けた蟻
- 2割のサボり蟻。
1つ目の絵の具で死んだ蟻は、社会や時代の流れに取り込まれてしまった哀れな人間を表している。沢田があのままアートキュレーターの土屋の言いなりになっていたら、自分の個性のようなものは哀れな蟻のように殺されてしまっていただろう。描きたいから絵を描く。理由もなく絵を描くという沢田の本質的な部分が壊れ、別の人間になってしまう。
沢田は円の流れに殺される蟻にはなりたくなかった。あのまま行ってたら円相に何かを殺されていた。土屋の妻?の現代芸術家が言ったようにペットの豚になってしまう。だからこそ土屋に描かされた円相の絵をパンチで突き破ったのかもしれない。
2つ目は屋上で絵を描いていた沢田に助けられた蟻のことで、これは柄本明演じる先生の言葉に救われた沢田と考えられる。沢田は円相に巻き込まれるのではなく、円相の中にいても誰かを助ける先生のような人物になりたかったのかもしれない。
そして田舎へ引っ越してみると、交通整理のバイトをしている先生と出会う。先生は茶道の偉い先生かもしれないが、さまざまな社会的な役割に流転している。諸行無常に近い生き方だと感じた。
考察2:暴動や反抗すら円相に回収される
矢島(吉岡里帆)が沢田の個展に乗り込み、金のための作品であり真の芸術ではない!と言っていた。矢島の仲間は沢田のまるに上から絵の具をぶちまけていく。それを見た土屋は笑っていた。個展で襲撃された絵!ということでさらに価値を伸ばせる!とでも思ったのだろう。
矢島がやっている富裕層が貧困層から搾取している!との抗議は正しいのかもしれないが、結局はそれすら資本主義というある種の巨大な円相の中に取り込まれてしまうことを表現しているのだろう。
考察3:何事にも意味や価値を求め過ぎる現代人への皮肉
3つ目のさぼり蟻については横山が「サボっていてなんの価値も生み出さない人間に価値はない」と言っていた。
ただ、沢田自身はさぼり蟻については否定はしていない。意味や価値が本当に必要なのか?と問いかけるセリフも多々あった。
何事にも意味を求める思考は極めて西洋的だ。だから本作に考察で答えを出すような考え方自体がある面ではこの映画の本質から外れてしまうのかもしれない。
意味など何も考えずにまんじゅうを楽しむ心が必要なのではないか。
映画まるキャスト
沢田(堂本剛)
横山(綾野剛)
矢島(吉岡里帆)
モー(森崎ウィン)
田中(戸塚純貴)
吉村(おいでやす小田)
大家さん(濱田マリ)
先生(柄本明)
土屋(早乙女太一)
古道具屋(片桐はいり)
秋元洋治(吉田鋼太郎)
若草萌子(小林聡美)