映画『呪詛』から本作で学んだこと
哲学や心理学で常に問いの中心にある人間の認識の問題を冒頭で提示し、思考実験のていを取り、いわば催眠術のように視聴者を作品の中へ引き摺り込む。
視聴者が“祈り”を唱えさせられたのは主人公の娘を救うためだったはずが、視聴者自身がその呪いを被るための“呪文”だったとわかる。
善意ではなく悪意に加担していたとわかり、その恐怖と裏切りから映画『呪詛』自体に視聴者の現実が覆われてしまうかのようです。
ラストシーンも大黒仏母の顔のブツブツ空洞がアップになって、吸い込まれ・覆われていくようでした。映像も恐怖の概念にリンクしているんですね。
全体からみて特定の個人を救う→全員で呪いをシェアするという構造上のベクトル転換が完璧に機能しています。
今後のホラー映画で現実とリンクする本作のメタ構造が流行りそうですね。
自分がこの呪いに関わってしまったかも…と1/100でも思ってしまうだけで、臨場感がぜんぜん違います。
視聴者参加型のコンテンツは失敗するとシラケますが、ホラーは呪文などがあるので手法を適用させやすいのでしょう。
ただ一方で、見てる側の認識を変えるというコンセプトは決して大袈裟でなく危険です。
プラシーボ効果「まったく関係のない薬を与えられた被験者も症状が改善する」などの実験結果もたくさんあります。
ようは、人間の認識=思い込みの力は、想像以上に強力なのです。
特に10代の感性が鋭敏な若者たちが本作のような作品にのめり込みすぎては、いい影響だけがあるとは思えません。
広義の意味では『呪詛』というコンテンツ自体が禁忌(タブー)の範疇に入るでしょう。
『幽遊白書』のビデオテープ黒の章(人間の残忍な罪が記録されており、仙水が人類を滅ぼうと思った)みたいですね。
正直、視聴禁止コンテンツ!にするほどのレベルではないですが、セーフとアウトのライン上にある作品だとは思いました。
良い方面に還元すると、台湾ホラー『呪詛』は「映像は見る人の思考を再構築できる」という学びを再認識させてくれた強力な作品でした。
最後のまとめ
Netflixホラー『呪詛』は、最高の恐怖とおぞましいメッセージを視聴者に伝えた傑作でした。
怖い・面白いだけでなく、メタ的なコンセプトまで優れている!
台湾ホラーすごいですね。これから他の台湾映画もあさってみたいと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。台湾映画『呪詛』レビュー終わり!
2022年公開ホラー映画の関連記事
映画『牛首村』は清水崇監督による『犬鳴村』『樹海村』に続く恐怖の村シリーズ第3弾。木村拓哉と工藤静香の娘・Kōkiが今作で女優デビューを飾りました! 宜保愛子が建物内へ入るのを拒否した実在の心霊スポット 富山県の坪野鉱泉が舞台で、この[…]
- 1
- 2