映画『ジョーカー』ネタバレ考察「悪への羽化&狂気の怪演」ホアキン・フェニックスジョーカーを徹底解説

  • 2024年4月11日

映画『ジョーカー』(2019)。期待を軽く超えるホアキン・フェニックスのジョーカーに悪寒が走る。走り方や仕草、すべにおいて異質!

個人的にはダークナイトでヒース・レジャーが演じたジョーカーを超えたと考える。(スーサイド・スクワッドでジョーカーを演じたジャレット・レトがこの映画を見たらショックを受けるだろうな・・・)

映画ジョーカーは作品全体として考えても、アメコミ映画ながら芸術性抜群で、本年度の アカデミー賞も期待できる出来栄えだと感じた!( ベネチア金獅子賞獲ってるし。)→ホアキンフェニックスが2020年度 アカデミー賞主演男優賞獲得!

この記事では、あらすじネタバレ、ジョーカーの凄さ解説、演技や見せ方を考察していく。

映画『ジョーカー』ネタバレあらすじラスト解説

1:社会的弱者アーサー

精神病院から出たアーサー(ホアキン・フェニックス)は、市が運営するカウンセリングを受け薬を飲みながら、イベントのピエロとして働いていた。脳の神経の問題(トゥレット症)で、突然笑い出してしまうため、周りから気味悪がられることが多い。

アーサーはボロアパートで、介護が必要な母ペニーを世話していた。

母は30年前にウェイン邸で働いていたことから、トーマス・ウェインに貧困から救ってくれと何回も手紙を出している。

アーサーにとって、有名司会者マーレイ( ロバート・デ・ニーロ)の番組だけが、世の慰めだった。

ある日、ピエロとして店頭で宣伝していると、不良たちに看板を取られ、ボコボコにされてしまう。

上司はアーサーに非があると彼を責め、さらにアーサーは次の仕事で、同僚にもらった拳銃を児童施設で落としてしまうというヘマをしたため、首(クビ)になる。

2:アーサーの変貌

地下鉄で自暴自棄になって笑っていたアーサー。

ウェイン証券の3人組がちょっかいを出してきたので、突発的に銃で3人を射殺。

アーサーは公衆トイレで何かに解放されたように踊った。

アパートに帰ったアーサーは、かねてから気を寄せていた、同じ階のシングルマザーソフィーの部屋に入り、キスをする。

ピエロが金持ちを殺したというニュースが広まり、 貧困層の不満が爆発。ピエロの仮面を被ったデモ集団が、 ゴッサムの富裕層に向かって訴える。

アーサーは、母親ペニーが書いたウェイン宛の手紙を読むと、自分がウェインの息子だという文章が書かれていた。ウェイン邸に行ったアーサー。

門の側に小さな少年ブルースがいる。アーサーは手品を見せ、二人は少し話をする。しかしアーサーは駆けつけた門番に追い払われ、母ペニーが狂っていたと言われてしまう。

母親のペニーが 脳卒中で倒れる。アーサーの側にはソフィーもおり、病院のベットに横たわるペニーを二人で見守っていた。

3:母ペニーとの決別

富豪が集まるシアターに忍び込んだアーサーは、トイレでトーマス・ウェインから母ペニーが狂って精神病院に入院していたと聞かされる。

アーカム精神病棟に行き受付に確認すると、確かに母親の記録があった。

アーサーは記録簿を奪って逃げ、詳しく読んでみた。すると自分はペニーの養子であることがわかり、ペニーの恋人から酷い虐待を受けていたと知る。アーサーの病気も虐待による後遺症であった。

アーサーは、入院しているペニーを枕で窒息させて殺害。太陽の光が病室に差し込む。

夜、ソフィーの部屋に入ると、アーサーを見つけたソフィーは怯えていた。実は、アーサーと一緒に行動していたように見えたソフィーは、彼が作り出した妄想で、実際にはソフィーと恋人関係ではなかったのだ。

アーサーは顔を白塗りにする。アパートを二人の元同僚が訪ねるが、アーサーは一人の男の頭を潰して殺す。

4:アーサーからジョーカーへ覚醒

スタンドアップコメディによる嘲笑(ちょうしょう)がオーディエンスに受けたため、マーレイのTV番組に呼ばれたアーサー。

(この映画の参考になったキング・オブ・コメディの主演 ロバート・デ・ニーロが司会者マーレイ役を務めている。)

彼はTVの前で、地下鉄で3人の証券マンを殺したのは自分だと言い、マーレイを射殺した。

ピエロの仮面を被ったデモ集団が、 ゴッサムの街を練り歩き破壊する中、アーサーはパトカーで運ばれる。

次の瞬間パトカーにトラックが追突し、ピエロの仮面を被った男たちが、気絶しているアーサーを車のボンネットの上にのせた。

アーサーは立ち上がり。自分の血で大きな“口”を描いた。

場面は変わる。アーサーは精神病棟でのカウンセリング時に、ジョークを思いついて笑っていた。

ジョーカー(Joker)映画あらすじ(ネタバレ) END!

映画『ジョーカー』ホアキン・フェニックス ジョーカー徹底考察(ネタバレ)

結論から言うと、ホアキン・フェニックスのジョーカー歴代最高であり、最狂だと思う。

マーティン・スコセッシのタクシー・ドライバーを参考にしたストーリーと役作りもガッチリハマっている。

(ちなみに、この映画をスコセッシが監督してディカプリオがジョーカーを演じることも一時検討されたらしい。)

髪型やメイク、ホアキン・フェニックスの ガリ ガリの体づくりが相まって、芸術性が高いヴィランになっていた!

ストーリーも込みで、とうとうアメコミ映画が芸術の域にまで達したのが『ジョーカー』といえるだろう。

ホアキンフェニックスのジョーカー

具体的に良かった点を挙げていく。

まず、ホアキン・フェニックスはメイクしていない状態でも、血色がとても悪く、すでにスリル満点の怖さである。

病気でおかしな笑い声を響かせるのだが、完全に狂気と言っていい。まだジョーカーになってないにも関わらずだ・・・

そして、メイクをした後は完全に狂気の向こう側に行ってしまった。もはや迫力があるなどと言う言葉では片付けられず、異質なオーラを身にまとった最狂ヴィランと化した。

ピエロメイクで3人の男性を射殺し、公衆トイレで 太極拳のような奇妙なダンスをみせる(即興らしいねこのダンス)。

ジョーカーのメイクをして廊下を歩く、背後から光が照らす何気ない瞬間に覗かせる顔の表情は、かの哲学者 ニーチェがいっていた“深淵”そのものじゃないか?

我々は深淵を見つめているのか?彼は人間を超えた何かなのか?背筋が凍りつくとはこのことだ。

ニーチェが著書「 ツァラトゥストラはかく語りき」で言っていた“超人”とは、もしかするとこのジョーカーのことかもしれない・・・

単に悪に変化したのではなく、悪に羽化した。これがホアキン・フェニックスのジョーカーに対する僕の感想である。

映画『ジョーカー』バットマンの因縁も描いた

映画『ジョーカー』では、アーサーがジョーカーになった理由だけでなく、 バットマンとの因縁もしっかりと描けていた。

アーサーが ブルース・ウェインと異母兄弟だという嘘か本当かわからない件から始まり、なんとアーサーは幼いブルースに会い手品をみせて顔を触る。

そして、アーサーがトーマス・ウェインに、トイレでクズ扱いされ、殴られるということまで発展。

そしてラストでは、アーサーの殺しがキッカケで発展したピエロ暴動者が、逃げたトーマス・ウェインと彼の妻をブルースの前で射殺。

バットマンVSジョーカーの対立図式。そして、お互いがいなければ二人とも存在しないという、存在理由についても綺麗に描けていた。

映画『ジョーカー』どんでん返しネタバレ解説

映画『ジョーカー(Joker)』は、サスペンス映画としても秀逸な作品だった。作中で描かれた、主などんでん返しをリストアップしてみよう。

バットマンとジョーカーは異母兄弟かも!

母ペニーの言い分だと、アーサーと ブルース・ウェイン( バットマン)は異母兄弟ということになる。ストーリー上では、ペニーの証言が間違っている感じだったが、真相はわからない。

ジョーカーの母ペニーは元精神病患者

母のペニーが30年前、 アーカム・ アサイラム(精神病院)に入院していた履歴が確かにあった。アーサーは母の虚言にずっと騙されていたのか!?

アーサーは虐待が元で、脳の神経がおかしくなった

アーカム・ アサイラムの資料によると、アーサーの脳の神経の損傷は、 児童虐待が元で起こった可能性がある。信じていた母に裏切られたと感じた瞬間だ。

アーサーの恋人のソフィーが妄想だった

アーサーの側で彼を支えていたと思われたソフィーだが、実際にはそばに居なかった。そばにいるのはアーサーが作り出した妄想である。

本物のソフィーはアーサーを同じ階の住人としてしか知らない。

精神病院の謎

アーサーは序盤のカウンセリングでは、精神病院からすでに出ているということだったが、最後に精神病院がくる理由は!?もしかすると・・・彼はずっと精神病院を出ておらず、すべて彼の妄想だったのでは!?可能性がないとは言えない。

映画ジョーカーには、サスペンスチックな、どんでん返しが多いとお分かりいただけただろう。

しかも、アーサー自身が狂っているので、何をどこまで信じてよいのか、誰にもわからない(これまた上手い作りになっている)。

ジョーカー誕生の物語を描いたが、未だ謎を含んでまっせ!ということだろう!

ベールを脱いだジョーカー。しかし、全てがジョークだと言わんばかりに、物語は謎を持ち続けているのだ。

映画『ジョーカー』考察:社会にも親にも裏切られたアーサー

なぜアーサーが、ジョーカーになってしまったのか!?

映画『ジョーカー(Joker)』では、このポイントについても非常に上手く描かれている。

なぜジョーカーになったかの理由をリストアップしていくと、ああ・・・とても悲惨なことがわかる。

  1. 精神病院に入れられる
  2. 脳の神経の問題で世間からキミ悪がられる
  3. 自分がトーマス・ウェインの子供だった
  4. 社会の富の象徴トーマス・ウェインから母が狂っていたと告げられる
  5. 自分は養子で、母の恋人から虐待を受けていた
  6. 尊敬していたマーレイに笑い者にされる

アーサーがジョーカーとなった理由は決して浅くない。リストをみれば、社会、親、尊敬、全てに裏切られ、奈落のそこに突き落とされたことがわかる。

アーサーは、彼が生きる理由すべてに裏切られたといえるだろう。

ゴッサムシティという社会の螺旋階段から、華麗に転がり落ちたのだ。

映画『ジョーカー』ネタバレ感想・評価

ということで、『ジョーカー』は最高の映画だった。

シリアス度が物凄く高く、もはや単なるヒーローやヴィラン映画としての枠を完全にはみ出している。アメコミチックな派手な仕上がりを期待したファンには受入れられないかもしれない。

しかし、それでも2019年、確かに新たなジョーカーが誕生した。狂気の理由をたずさえて悪に羽化した、歴史上最狂のジョーカーだ。

ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレットレトなど、歴代の実写ジョーカー俳優をまとめた記事もどうぞ↓。

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