『グラディエーター2 英雄を呼ぶ声』ラストの意味を考察エディプスコンプレックスから脱却

  • 2024年11月15日

『グラディエーター2 英雄を呼ぶ声』ネタバレラスト結末の解説

ハンノ(ルシアス・ヴェルス/演 ポール・メスカル)は妻をマルクス・アカシウス将軍(演 ペドロ・パスカル)の軍団に殺され、捕虜としてローマに連れてこられる。ハンノは復讐の炎で燃えていた。

ハンノは剣闘士手配師のマクリヌス(演 デンゼル・ワシントン)の前で凶暴なサルと闘わされて勝利。マクリヌスに気に入られ、身柄を買われる。

マクリヌスはハンノをゲタ(ジョセフ・クイン)とカラカラ(フレッド・ヘッキンジャー)の双子皇帝の前で他の戦士と戦わせる。ハンノは相手を刺し殺した。

いっぽう、アカシウス将軍と妻ルッシラ(演 コニー・ニールセン)は、ローマ市民の生活をかえりみない双子皇帝に嫌気がさし、反乱軍を組織して政権を転覆させる計画を立てていた

マクリヌスはハンノをコロッセウムの闘技場にあげる。ハンノはサイに乗った戦士に勝利して歓声を浴びる。ハンノを見たルッシラは、かつて遠方に逃した息子・ルシアスだと確信する

ハンノたちは海水で満たされたサメがいるコロッセウムでも相手チームに勝利。

ルッシラはハンノの牢を尋ね、迎えに行かなかったことを謝る。さらに実父が英雄マキシマス(ラッセル・クロウ)だと言うことも告げた。

ハンノは母を受け入れられず追い返した。

※以下ハンノをルシアスと表記

アカシウス将軍は剣闘士大会の最後の日に反乱を起こすことを計画。ルッシラは「ルシアスを助けて欲しい」と頼む。

しかし2人のたくらみはスパイによってマクリヌスに伝わっていた。マクリヌスは双子皇帝にアカシウスとルッシラの反乱を告げる。アカシウスとルッシラは捕まる。

アカシウスは闘技場にあげられ、ルシアスと闘わされる。

ルシアスは妻アリサットのかたきであるアカシウスに攻撃を繰り返す。しかしアカシウスはルシアスを殺す意思はなく降伏した。

ルシアスも、アカシウスが仕方なくヌミディアを攻めた(皇帝に脅されていた)とさとり、もはや彼を殺す意思はなくなっていた。しかしアカシウスは衛兵の弓で殺される。ルッシラは泣き叫んだ。ルシアスは「こんなことが許されるのか?」と市民に呼びかける。暴動が起きそうな雰囲気だった。

ルシアスは医者のラヴィに頼んで、ルッシラから受け継いだ指輪(マキシマスのもの)を渡し、アカシウスの軍にローマに来るよう伝えてくれと頼む。

ルシアスは仲間の剣闘士たちと牢から脱出。ルシアスは磔にされているルッシラを救おうとする。しかし、ルッシラはマクリヌスに弓で射られて殺される。マクリヌスはかつてルッシラの父・アウレリウス帝の奴隷で、恨みがあったのだ。ルシアスは母の死を眼前にして泣き叫ぶ

その後、街では暴動が怒る。マクリヌスはカラカラ帝に嘘を吹き込んで一緒にゲタ帝を殺した。

マクリヌスは国の支配の実権を握り、軍をおこしてアカシウスの軍と対峙させる。

ルシアスがやってきてマクリヌスと一騎討ちになった。ルシアスはマクリヌスを倒し、殺害する。

ルシアスは闘技場にやってきて「父よ。言葉をかけてください」とつぶやいた

映画『グラディエーター2 英雄を呼ぶ声』終わり

『グラディエーター2 英雄を呼ぶ声』考察1:オイディプス王

本作は、エディプスコンプレックスの語源となったギリシア悲劇『オイディプス王(エディプス王)』に沿ったストーリーになっている。

(エディプスコンプレックスとは男児が母親を独占したいがために父親を憎む心理学用語)

主人公が皇位継承者ながら幼少期に追放され、自らのルーツによって国に戻ってきて父親を殺し(ルシアスは義父にあたるアカシウス将軍を結局は殺さず、アカシウスは衛兵の弓で死んだが)、母親に会う展開が一致している。

話型は『オイディプス王』に沿っているが違うのは、ルシアスが怒りに任せて義父・アカシウスを殺さず、さらに実父・マキシマスの意思を受け継いだところ。父親に反発しながらも最後は父の存在を受け入れたコンセプトは、アンチ・エディプスコンプレックスといってもよいかもしれない。

ラスト結末の意味:ルシアスとマクリヌスの対決

本作でルシアスと対局を成すのは、アカシウス将軍や双子皇帝でなく剣闘士手配師のマクリヌスだ。

マクリヌス自身が奴隷だったことが最後に判明する。ルッシラの父・アウレリウス帝に所有されていたらしい。

マクリヌスは皇帝になろうと企てていたが、実際は奴隷だった頃の恨みで行動していたのだろう。ローマを滅亡に導こうとしていた気さえする。マクリヌスは復讐の連鎖を断ち切ることができなかった。

いっぽうで、ルシアスはアカシウスを殺さなかったことで負の連鎖を断ち切った。そして最後にマクリヌスを倒したことで、復讐を捨てたものが復讐し続けるものに勝利したという美しいテーマが浮かび上がってきた。