デイヴィッド・ホックニー展 感想レビュー!クラーク夫妻とパーシー,春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート東京都現代美術館

  • 2023年10月4日

沖縄に住んでいる僕ですが、東京に行く用事があったので東京都現代美術館にあるデイヴィッド・ホックニー展に行ってきました。

絵画や美術は好きなのですがまだまだ勉強中!そんな僕ですが、このデイヴィッド・ホックニー展は人生が変わるような素晴らしい体験になりました。ぜひたくさんの人に行って欲しい!

7月から始まり、私が行ったのは9月後半でしたが、日曜だったこともあって人がたくさん。みんな目をギラつかせ手ホックニーの世界に引き込まれていました。

「クラーク夫妻とパーシー」“見る力がずば抜けている”ホックニー

「クラーク夫妻とパーシー(mr and mrs clark and percy)」や、ホックニーが自身の白髪の両親を描いた「my parents」を見て感じたことは、観察眼がずば抜けているということ。

そこに物理的な有機体があるとは言いませんが、絵の中のクラーク夫妻やホックニーの両親は「間違いなく生きている」と強く感じました。

シネマグ

絵の中の人物が生きているというのはありふれた概念かもしれませんが、体験・実感したのはこのときがはじめてです。

ホックにーはクラーク夫妻や両親をどれだけ深く観察していたのか。常人の想像を絶するほど細かく見ていると思います。だからこそ絵の中に対象の存在がありありと感じられるのです。

世界的な画家なので当たり前かもしれませんが、「対象を観る力がずば抜けているから、こんな傑作を生み出せるのだ」と驚嘆しました。

ホックニー自身が本で語っているように、絵にはアーティストが対象を見ることで得た経験が反映されています

クラーク夫妻や両親の絵を見ることで、ホックニーがどのように彼らを見ていたか、そしてどのように接していたかが伝わってくるようです。

そういった意味で、写真でパチリと撮ってしまうことより、1人の人間が相手を観察して描く肖像画にははかりきれないほどの価値があると再認識できました。

「スプリンクラー」の水の動き、プールの光の屈折

有名な「スプリンクラー」を生で見ると水の表現がすごく個性的だと思いました。

スプリンクラーの平面的な水が虫の羽にも見えて面白いです。鈴虫みたいですね。

だれもが見たことあるようなスプリンクラーを、だれも見たことのない表現で描くことで、現実における我々のスプリンクラーの見方まで変えてしまいます。

ホックニーも本で言っていましたが、絵には現実の物の見方を変える力があるとしみじみ思いました。

当時約102億円で落札された「芸術家の肖像画―プールと2人の人物―」は残念ながらなかったのですが、プールを描いた作品はいくつかあり、プールの中で踊る曲線的な波を堪能できました。

ホックニーが描く波は踊っているようですが、おもえばプールと日光がつくる光景ってこんな感じでしたよね。

シネマグ
ホックニーが僕に世界の見方を教えてくれているようでした。

デイヴィッド・ホックニーについて思ったこと

「春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート」や「ノルマンディーの12か月」などなど、彼の作品を2〜3時間かけて思ったことは、葉っぱの1枚とってもそこにホックニー自身の影が見えるということです。

特にキャリア序盤の作品は画家としての視点だけではなく、絵の中に自分を投影したモチーフを入れ込んでいることが多いと思いました。

後期になるとその傾向が薄まっていきますが、やはりiPadで葉っぱを点々で表現するにしても、そこになんらかの意志が強く感じられるのです。

自分は対象をどう見ているのか。自分が描いている絵と共に自分はどう存在しているのか。自分は対象のことをどう思っているのか。

ホックニー自身の主観的な体験を強く反映させているところに個性があり、僕たち鑑賞者もそれを感じ取れるから感動するのだと思いました。

シネマグ
デイヴィッド・ホックニーはもちろん来ていませんが、彼に会えたと心から感じられたすばらしい展覧会でした。

グッズはイマイチ。ホックニーの本「はじめての絵画の歴史 ―「見る」「描く」「撮る」のひみつ」を購入

ホックニー展のグッズは僕にとっては思い出を残すくらいの意味しかなさそうなのが多く、あまり惹かれるものがなかったです。キーホルダーは2個買いましたけど。

カタログはよくできていましたが、実物を見てしまうと、カタログはなんか実物を矮小化しているようで買う気になれませんでした。

ポスターも買おうかと思いましたが、東京都現代美術館の文字が大きく入っていたのでやめました。

スプリンクラーやプールのTシャツもありましたが、すばらしい個展を見たあとでTシャツを着る気にもなりませんでした。(まあホックニー本人は「着ればいいんじゃない?」って言いそうですけど)

ただホックニーが書いた本はおもしろそうだったので購入。

子供でも読める「はじめての絵画の歴史 ―「見る」「描く」「撮る」のひみつ」という本です。

読むと目から鱗の連続でした。絵を描くこと、絵を見ることの本質を描いた本は初めてではないでしょうか?

「線はしるしであり、しるしは絵である」とか「絵には画家の体験が反映されているとか」とか「キュビスムは頭の中のイメージを投影している」とか、「人間は1つの視点から物を見ているだけでない」とか、これまで全く考えも及ばなかったさまざまな発見が得られました。

この本を読むと、ホックニー展でみた数々の絵の秘密がわかってくるような気がします。

正直、義務教育の美術の時間はこの本を教科書にしたほうがいいと思いました。絵の本質がわかるからです。

人物と作品名だけ覚えさせる無意味な美術教育より数百倍いいと思いました!

デイヴィッド・ホックニー展まとめ

というわけで、デイヴィッド・ホックニー展は不勉強な僕の美術の鑑賞法を180度変えてくれるようなすばらしい体験でした。

たぶんつまらない映画を見るより何倍も価値があると思いますし、ビジネスのアイデアや生き方に迷っている人は新しい発想が得られると思います。

2023年11月まで行われているので、時間がある人はぜひ行ってみてください。