映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を観ると、フランク(レオナルド・ディカプリオ)とカール(トム・ハンクス)の関係性に思わずジーンときてしまう。
詐欺師とFBIという関係性でありながら、なぜこんな素晴らしい友情が生まれたのだろうか。
今だったらこんな関係絶対ありえないだろうし、大問題になる可能性も高い。
この記事では『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を通して、1960年代アメリカがどういう時代だったか考察していきたいと思う。
映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は実話?ネタバレ解説
映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、フランク・W・アバグネイル・Jrの自伝と、彼が実際に起こした詐欺事件が元になっている。
脚色もあるため、細かい場面を取り上げてしまうと、時代考証という意味では不正確になってしまうだろう。
しかし、大筋であるフランクがFBI(連邦捜査局)で働いたというのは事実であり、彼はそのあと詐欺防止のセキュリティコンサルタントとして世界の企業を相手どり活躍している。
この人生逆転劇は実話である。
世紀の犯罪者から一転、世界の名だたる企業にセキュリティアドバイスをして回るようになったのだから、振り幅は史上最大級。
日本で言うと、不倫の果てに尼さんになった寂聴(じゃくちょう)さんや、ヤクザの女から弁護士になった人を思い出すが、それ以上のドラマだといえるだろう。
映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』ネタバレ考察/詐欺師とFBI捜査官の友情
映画『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でトム・ハンクスが演じたカールという名前の人物は実在しない。
しかし、ジョー・シアというFBI捜査官がおり、フランクと親友の関係がずっと続いていたというのは事実である。
詐欺師とFBI捜査官の友情はなぜ成立したのか?
当の本人たちに聞けるわけではないので推測になるが、フランクの詐欺の能力や、機長や医師になりすます手口から察するに、非常に頭が良くて魅力的な人物だったのだろう。
いわゆる人たらしというやつだ。
カリスマ性のある人間とは立場や倫理観といったものに邪魔されず個人と個人として付き合いたいと思うのだと思う。
『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と似ている映画や作品
『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のひとつのテーマが立場がまったく違う二人の友情というものだ。そこで、同じような設定の映画や漫画を考えてみた。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドに似てる
思いついたのがタランティーノ監督のワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
この映画も俳優とスタントマンという、立場がまったく違う二人の固い絆を描いている。
キャチ・ミー・イフ・ユー・キャンも、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドも、実在のモデルがおり、その後、現実でも友情が長く続くという類似点がある(レオナルド・ディカプリオも共通)。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドも1960年代後半を舞台としている。
もしかすると1960年代のアメリカは、友情がいろんな形で成立する古き良き時代だったのかもしれない。
漫画 火の鳥の黎明編
映画『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を観て思い出したのが、手塚治虫の火の鳥の黎明編。
主人公のナギは猿田彦の軍に親族を殺されて怒り狂うが、次第に彼と猿田彦は、お互いにとってなくてはならない存在になっていく。
『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は詐欺師とFBI捜査官という宿敵同士の友情が描かれているが、火の鳥の場合は少しヘヴィで、家族の仇(カタキ)との友情が描かれている。
偶然にも、フランクが詐欺師として活動したのも、火の鳥の黎明編が描かれたのも、同じ1960年代後半。
1960年代には、世界的に憎しみを忘れようという思想があったのだろう。それは当時の歴史や文化を考えるとよくわかる。
映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の裏側にあるヒッピー文化
1960年代には、世界的に憎しみを忘れようという思想があったといったが、当時はヒッピー文化の全盛期だったというのが少なからず関係していると思う。
ヒッピーには社会の規範にとらわれずに、人の多様性(ダイバーシティ)を認めるという思想がある。
フランクとカールの関係も、多様性を認め合った結果だと言うこともできるのではないか。
加えて当時はベトナム戦争の真っ只中であり、人々の中に、もう敵味方に分かれて戦うのはやめようという願いが強くあったのだろう。
そういう文化や時代背景があったからこそ、フランクは詐欺を働いても社会復帰でき、FBI捜査官のジョー・シアと親友になれたのかもしれない。
『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』結論!1960年代のアメリカは真のフリーダム!
なぜ、今では考えられない『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のような友情物語が生まれたのか!?
それにはフランクの人間性も少なからず関係しているが、背景に1960年代の反体制フリーダム的な雰囲気が大きく影響していたように思う。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や「火の鳥」を生み出した1960年代。
他にもアポロ11号の月面着陸、ウッドストックのライブなど、人間のエネルギーが爆発したのがこの時代なのだ。
『キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は熱い1960年代を通じて“真の友情”とは何かを教えてくれる映画なのだ。
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