Netflix映画『薄氷』ネタバレあらすじ考察,解説・感想!濃厚極寒パニックの評価

  • 2024年3月24日

Netflix独占配信の映画『薄氷』(2021)【英題:Below Zero、スペイン語:BAJO CERO(ゼロ度以下という意味)】。濃厚で冷たい、異色のパニックサスペンスだった。

囚人護送車が襲われて七転八倒するストーリーと、答えのない絶望感が特徴。映画好きは楽しめる渋いタイプの作品。

あらすじネタバレ解説と、感想や評価特筆すべき点の考察をしてみました!

スペインサスペンス特有の湿り気のある暗さがクセになるぜ!

『薄氷』ネタバレ感想・評価/七転八倒の異色サスペンス

評価は85点くらい。

スペインのサスペンス映画の中では、個人的に『マーシュランド』『マジカル・ガール』に次いで第3位の面白さ。

スペイン映画らしい湿っぽい暗さと冷たさ、見終わった後の勝利者のいない絶望感が心地よかった。(勝利者のいない!とか、答えがない!という結末が、芸術大国スペインの映画の特徴のような気がする。)

ストーリーはマフィアのボス・ミハイがすぐ死んだり、警官のモンテシノスが生きていたり、ミスリードも多く、二転三転どころか何転もする、とても凝った作り。

凍った湖に護送車が沈んでいく演出も素晴らしい!

そして、凝ったストーリーや演出以上に、全体的な暗く冷たい雰囲気が存在感を持つ不思議な作品だった。

一般受けするかはわからないが、見る価値のある映画だと思う。

『薄氷』徹底考察/多視点・セブンっぽい・シカの意味

多視点

主人公と犯人ミゲル

「映画がだれ目線で進んでいくか?」がコロコロ変わるのが、『薄氷』のひとつの特徴だと思う。

最初は主人公・マーティン目線だけど、途中からバーを持つのが夢のおっさん囚人・ラミスの視点になる。かと思えば、次は襲撃犯・ミゲル視点で進行するという具合だ。

さらに冷たい雰囲気をさらに醸し出すように、車から離れた森からの俯瞰ショットも多い。

多視点は、見る人が特定の人物に感情移入しずらいデメリットはあるものの、本作は感情移入よりも、全体の芸術的な雰囲気を重視していたように思う。

絵画でいうとピカソの『ゲルニカ』のように多視点・キュビズム的な作品で、内容よりも全体を感覚的に捉えることに価値がある映画だといえる。

サスペンス映画セブンとの類似点

※映画セブンのネタバレあり

冒頭から全体的な色のトーンがブラピ主演の映画『セブン』っぽいと感じた。ラストで上空からヘリに見守られつつ主人公がやらかしてしまう(囚人を撃つ)のはほぼ『セブン』だろう。

主人公がストーリー上でほとんど力を持たず、ハプニングや感情に翻弄されていくところも似ている。

まあ、参考にしたのでしょう。

三つ巴の戦いどころか四つ巴

登場人物たちの立場と関係もわりと複雑。

具体的に分けると、

  1. 警官のマーティン
  2. 生きることに必死な囚人・ラミス
  3. 襲撃犯ミゲル
  4. ミゲルの娘を殺した囚人・ナノ

と、ほぼ護送車の中というワンシチュエーションながら、関係はかなり複雑だったのも印象的だった。

シカの意味

映画『インビテーション』(2015)やドラマ『ウォーキング・デッド』などなど、映画やドラマで象徴的な意味合いでよく出てくるシカ。

本作でも登場していたので具体的にどんな意味があるのか調べてみた。

ヨーロッパではシカに神という意味があり、キリスト教では悪魔の使い的な意味があるらしい。どっちなんだ?

『薄氷』では犯人・ミゲルがシカを目撃して感慨深い表情を浮かべていたので、シカ=娘という意味が強いと考える。

「娘なら、復讐をやめてほしいと思うだろうな…」

そんなミゲルの深層心理がシカのシーンに反映されているのだろう。

映画『薄氷』ネタバレあらすじ解説

襲撃された囚人護送車

薄氷の主人公マーティンと倒れたモンテシノス

ある夜、チノという若者が何者かに追われて暴行を受ける。彼は、意識朦朧となったところを穴に埋められて殺害された。

新しい部署に赴任した中年警官・マーティンは、同僚のモンテシノスと一緒に、クエンカ刑務所から6人の囚人を移送を担当することに。そのうちの一人でルーマニア人のミハイ・ルンゴは、マフィアのボスで大物らしい。

マーティンが護送車を運転していると、霧が濃くなり先導車も見えず、巻きびしを踏んで急停車を余儀なくされる。外に出た同僚のモンテシノスは何も連絡をしてこない。マーティンも外に出るとモンテシノスは撃たれて死んでおり、先導車は横転して中の2人は死亡している。

自分も犯人から散弾銃で足を撃たれ、護送車に駆け込んだ。しかし車は故障して動かず、仕方なく後方の護送オリへ避難。

囚人たちの部屋は個別に分かれており、ラミスという男性尻から出した針金と紐を使い、手錠と部屋の鍵を外していた。

囚人らは、マフィアのミハイの仲間が彼を助けに襲撃していると考える。

そのとき外から少量のガソリンが入れられて火がつき、老囚人・パルドが焼け死んだ。

ラミスはみんなのドアを開け、パニックになるマーティンを押さえつけた。落とした護送車の鍵をミハイが拾おうとすると、ナノ(若い囚人)が消化器で彼を何度も殴って殺害。

そこへ外にいる犯人から無線が入ってくる。

犯人の目的は?

犯人・ミゲルは「護送車を開け、ナノ(若い囚人)を渡さなければ全員殺す」と脅してきた。しかしナノは鍵を飲み込んでしまう。

ラミスはナノとマーティンをオリに閉じ込めて、要求どおり外へ出る方法を考える。

外にいるミゲルは、車を修理して発進させた。

ラミスは不意に、マーティンの結婚式で歌を披露した過去を話し出しす。

実は生きていたモンテシノスは、ミゲルの車に乗り護送車を追う。モンテシノスは操縦するミゲルを銃で狙うが当たらない。車は体当たりされて、脇に激突して息たえた。

護送車も急停車し、床下の荷台でボルトを外そうとしてた囚人レイは、頭にボルトが突き刺さって死亡。

ミゲルは無線で「時間切れだ」と告げ、凍った湖の上に護送車を停めて、氷を散弾銃で撃つ。

薄氷からの脱出と驚愕の結末

護送車が浸水し、車体は傾きながら沈んでいく。

マーティンは後方に非常口があると言い、ラミスは針金でマーティンのドアを開けようとするが、それを水の中に落としてしまう。ドラック中毒のゴラムが潜って針金を取るが、彼は寒さで息を引き取った。

ナノは先に非常口から泳いで出て、廃村へ逃げた。マーティンとラミスも脱出するが、氷の上に上がったマーティンは力尽きかけ、ラミスの人工呼吸で息を吹き返す。

マーティンは、ラミスからドミニカでバーを出店するのが夢だと聞き、別れを告げた(職務放棄して逃しす)。

近くの廃村でミゲルがナノを銃で狙っている。マーティンはミゲルのところへ行き、なぜこんなことをしているの理由を尋ねた。すると、「ナノとチノが、13歳の娘・ソレダットをレイプして車で引きずって殺したが捜査不備で立件されなかった。娘の死体の場所を聞くためだ」と返される。

2人の娘がいるマーティンは彼の話に共感するが、警官として止めなければと思い、乱闘になる。ミゲルに銃を向けるが撃てない。

ミゲルはその場を離れ、足を怪我したナノを追い詰めて殴る。マーティンが止めに入ると、上空から特殊部隊のヘリの音が聞こえた。

命が助かったとわかり、ミゲルに暴言を吐くナノの右腕を、マーティンは銃で吹き飛ばした。ミゲルの娘の死体がある場所を言えと語気を強めると、ナノは叫びながらパルデサ農場の井戸の中だと暴露。特殊部隊が周囲を囲んだ。

後日、マーティンは警察署を去っていった。

映画『薄氷』END!

Netflix独占配信作品の解説・ネタバレ記事をあわせてどうぞ!

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