幽霊の月~それは謝罪のようなレクイエム~筆者3月コラム

  • 2024年5月15日

筆者(伊良波といいます)の話になるのだけれど、2月は、 アメリカの雪山を舞台にした小説を一気に書いた。初めて書いたにしては中々うまくいったような気もして、それを手直ししながら連載しているわけだ。

そして、2020年3月にはもっと大きなイベントがあった。いや、ある筈だった。

そのイベントは幽霊のように消えてしまったのである。

何が消滅したかというと、自分が出演した映画の試写会。

田 港栄輝監督による『 ストレプトカーパス』というインディーズ作品だ。

ストーリーは、あるコンテストで争うそれぞれのバンドの群像劇で、筆者はなぜか逃亡者の役。そして、映画のエンディング曲の制作も担当させてもらった。

当初は2019年6月頃に映画は完成予定だったが期間が延びて、3月7日にやっと試写会という日の朝だった。 iphoneのグループラインにメールが入る。田港監督からだ。

「パソコンの故障で編集データが破損しました。」

次いで、「上映は不可なので試写会は中止になります。」

筆者は絶望した。

そして、何を思い浮かべただろう。そう幽霊だ。

何を言ってるんだコイツは?と思った方も多いと思う。

加えて筆者は“見えるタイプ”の人間では全くない。

ちゃんとワケを説明しよう。

実は、当初の完成が延びたのには裏話がある。

2019年5月頃に、筆者の出演シーンの撮影があった。

場所は伏せよう。伏せた方がいい。

とにかく住んでいる沖縄の某所である。

わりと都会な雰囲気の場所のすぐ近くの公園に、人通の少ない抜け道がある。

そこで血糊のついたUSBを受け取り、走って逃げるシーンだった。筆者の トム・クルーズばりの走行フォームを監督も気に入り、数テイクでOK!順調に終わった。

そう、今思い出したのだが、筆者の手には帰り際まで、血糊がベットリとついていたのだ。

そして翌日、筆者は高熱を出した。共演者も熱を出した。撮影に同行した女性も高熱を出した。田港監督は撮影後あろうことか、公園の丘の上から落ちそうになったらしい。

勘が鋭いセンス抜群の読者ならもう、わかっただろうか。

共演者の女性から連絡があり、“あのこと”について相談があった。

実は、昨日撮影した公園の抜け道のそばには、巨大なお墓があったのだ。

大きなお墓、どの程度か説明しよう。

まず、読者に知って欲しいのは、沖縄のお墓は女性の子宮をイメージして作られており、とてもでかい。毎年4月にはシーミー祭といって、先祖のお墓の敷地内に親戚が集まってお昼ご飯を食べられるくらいの広さだ。

そして身分が高ければ高いほど、お墓は大きくなる。

撮影場所のお墓は、家一棟が余裕で建てられるほどの敷地だった。

相当なセレブだったに違いない。墓の主がね。

ああ、今思い出したのだけれど、筆者や監督は敷地内にちょっぴり“侵入”しながら撮影をしていたんだ。そこが、隠れ場所になったものだからつい出来心だった。

ただ、共演者の女性には男らしく「気にするな!」とだけ伝えた。

確証がないのに騒いでも仕方がないからだ。

思えばそれから、撮影や編集期間は様々なトラブルで大幅に延びた。(出演者の留学という意味不明なものまで)

あとで、父から聞いたのだが、その土地は、第二次大戦で米軍が上陸した際に激戦区となった場所でもあるらしい。

そこからの3月である。

結果はご存知の通り。試写会の没落。

幽霊は Appleのパソコンのデータも壊せるのかもしれない。

それは置いておいて、ここでの本題に入ろう。

筆者は謝罪をしたかったのだ。

「セレブなお墓の持ち主よ、無断で入って本当にすいませんでした。」

パソコンに入れるなら、ブログでの謝罪もきっと届くだろう。

そう願うしかない。

再び現地入りしての謝罪は億劫だし、礼儀作法もわきまえていない。

届けこの願い!

長くなってしまったが、結論を話そう。

この一連の出来事は、筆者にとってうれしい話でもあった。

もしかしたら、目に見えている以上の世界があるかもしれない。

科学では説明のつかない何かが。そこに少し近づいたような気がする。

謝罪を謝罪で終わらせて、相手は喜ぶだろうか。

最後に、お礼を言いたい。

ありがとう。